お客様事例紹介

株式会社商船三井様〈6EY26DF〉

船名: いしん

・船主: 株式会社商船三井
・建造造船所: 金川造船株式会社
・トン数: 247G/T
・船種: LNG燃料タグボート
・搭載機関: 6EY26DF×2基
・定格出力: 1618kW
・回転数: 750min-1
・竣工: 2019年2月

LNGとディーゼルの二元燃料エンジンの搭載で、環境負荷低減の運航を実現 LNG燃料タグボート「いしん」

大阪湾初のLNG(液化天然ガス)を燃料としたタグボート「いしん」が2019年2月27日に神戸港で竣工し、同年3月から大阪湾や瀬戸内海を航行する大型貨物船などの警戒業務や入出港のタグ作業に従事している。同船は、海運大手の株式会社商船三井(以下、「商船三井」)が2017年の建造決定後、2年弱の期間を経て完成させたタグボートで、ヤンマーから舶用デュアルフューエルエンジン(6EY26DF)2基、LNG燃料タンク、バッファタンク、ガス燃料装置などを含めた燃料供給システムが一括で納入された。建造はタグボート製造国内最大手の金川造船株式会社(以下、「金川造船」)が携わり、運航には商船三井のグループ会社、日本栄船株式会社(以下、「日本栄船」)があたっている。またLNG燃料は、商船三井と大阪ガス株式会社が大阪湾初の船舶向けLNG燃料供給体制を堺泉北港に整備し、陸側のLNGローリーからトラック・ツーシップ方式で供給される。

「いしん」の就航にあたって商船三井の八嶋浩一専務執行役員は、「本船は弊社が取り組む環境負荷低減の企業理念を実現した船で、地球環境保全という時代の要請に応えるために投入した。運航を通じてノウハウを得て、LNGに関する事業を広げたい」と建造の背景を語った。また運航に関わる日本栄船の西尾哲郎社長は、「長年の苦労が実現できたのも関係各位のおかげ、これから安全運航・安全作業に全社一丸となって取り組みたい」と力強く語り、造船の任を果たした金川造船の生駒剛人社長は「作業船一筋で歩んできた造船所として社を挙げて建造に取り組んだ」と堂々と語った。

2019年2月27日、神戸港にて「いしん」の引渡式が行われ、関係者に披露された。

左:株式会社商船三井 専務執行役員 八嶋浩一氏
右:金川造船株式会社 代表取締役社長 生駒剛人氏

(文中・写真の所属・肩書・役職等は全て掲載当時のものです。)
(文中・写真の所属・肩書・役職等は全て掲載当時のものです。)

「いしん」のデビューは、プロジェクトのシンボル的存在

商船三井でLNG燃料のタグボート建造計画が本格的に協議されたのは、2014年である。それまではLNG燃料に特定せず、「環境にやさしいエコタグとはどのような形か」というコンセプトの模索から始まり、電気推進船、ハイブリッド、CNG(圧縮天然ガス)などさまざまな形態が検討された。その後代替時期が近いタグボートに焦点を絞り、建造にかかる時間、技術的実現性などを考慮した結果、LNG燃料のタグボートの建造に至ったとのことだ。「いしん」は商船三井の先進船舶技術開発プロジェクト「船舶維新NEXT」の一環として位置付けられ、2018年9月に同プロジェクト名の「維新」から命名された。同船は、ガス燃料及び低引火点燃料を使用する船舶への安全要件を規定するIGFコード(国際ガス燃料船舶安全コード/2017年1月発効)に準拠した国内初のタグボートである。また、同船の最大の特徴はLNG燃料タンクが船の後部デッキに配置され、取り外し可能な構造となっており、燃料供給時や整備点検時の利便性を高めたことである。これら一連の環境整備が評価され国土交通省が認証する「内航船省エネルギー格付け制度」で最高ランクの4つ星を獲得している。商船三井では10年前にこのプロジェクトを立ち上げ、徹底して環境への配慮と安全の遵守というコンセプトを発信してきたが、「いしん」は同プロジェクトのシンボル的な船だと誇り高く提唱する。

LNG燃料タグボート「いしん」
LNG燃料タグボート「いしん」

船尾暴露部に設置されたLNG燃料タンク。「いしん」のイラストと省エネ各付け制度の4つ星がデザインされている。
船尾暴露部に設置されたLNG燃料タンク。「いしん」のイラストと省エネ各付け制度の4つ星がデザインされている。

飛躍的に排出ガス規制をクリアしたデュアルフューエルエンジン

2020年1月からは世界の全海域において船舶燃料の硫黄分濃度の規制強化が実施されるなど、船舶燃料への環境規制はますます厳しくなっている。ヤンマーでは環境性能に優れたLNG燃料に着目し、LNG燃料で運転するガスモードとディーゼル燃料で運転するディーゼルモードの双方を使用できるデュアルフューエルエンジン(二元燃料機関)として2012年より既存のディーゼルエンジン6EY26形機関をベースに研究開発をスタートさせ、2016年4月に商品化した。LNGとディーゼル2種類の燃料を使い分けて使用するデュアルフューエルエンジンは高度な制御技術が必要になる。6EY26DFには高精度な空気流量制御技術を投入し、エンジンを常に最適な燃焼状態で維持することにより高い信頼性を実現し安定した運転を可能にした。ガスモードではヤンマーのIMO2次規制対応ディーゼルエンジンの排気と比較した場合、NOxは約80%・SOx、PMは約99%・C2は約25%の削減を達成している。なお、NOx削減に関してガスモードではIMO3次規制もクリアしている

6EY26DFの特徴

・特徴第一: 「燃料のフレキシビリティ」
ノッキングが発生しやすい低メタン価のLNG燃料においても出力を制限することなく運転が可能であり、全負荷状態においても、ガスモードからディーゼルモードへ安全且つ瞬時に切替できる。
 
・特徴第二:「高度なエンジン制御」
独自の空燃比制御とノッキング検出システムにより安定したガスモードでの運転が可能。
ガスモードではマイクロパイロット燃料噴射装置による着火を行い、ディーゼルエンジンと同等の応答性を
実現。
 
・特徴第三:「ガスモードにおける高い熱効率」
ガスモードでヤンマーのディーゼルエンジンを超える熱効率46.8%を実現。

6EY26DF機関主要目

機種: 6EY26DF
機関定格出力: 1618kW
シリンダー数: 6
シリンダー径×行程: 260mm×385mm
排気量: 122.6L
回転数:750min-1
使用燃料:LNG(液化天然ガス)/船舶用重油

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