• 特集1 環境と防災に配慮した本社ビル「YANMAR FLYING-Y BUILDING」次の100年に向け出航:創業100周年を迎えたヤンマーは、創業の地である大阪市北区茶屋町に新たな本社ビルを建設しました。ヤンマー独自の最新の環境技術を導入することで、本社オフィスから排出されるCO2を大幅に削減し、将来的にはCO2排出量ゼロを目指します。また、中間層免震構造をはじめとする最先端の防災設計を採用することで強固な安全性を備えたビルとして、大規模災害が発生した際のBCPの速やかな実行と、大災害時には地域への貢献を果たします。ヤンマーは、この本社ビル建設を機に次の100年に向けて力強く出航します。

  • BCP:Business continuity plan(事業継続計画)の略で、災害発生時に特に重要な業務を中断させないための計画や経営戦略のことを指します。

「都市」「大地」「海」をテーマに、お客様との信頼の歴史を表現

ヤンマー本社ビルのデザインは「都市」「大地」「海」をテーマとしています。人々がにぎわう交差点に対し、迫り出すように建つ外観は「都市」のエネルギーに呼応する躍動感を、最上階まで達する大きな壁面緑化は緑に覆われた「大地」を、風を受ける帆をイメージした全体の外観は「海」を表現しています。

外観はできるだけシンプルにデザインし、雑然とした街並みの中で際立った存在感を示すことを意図しています。建物全体を覆う円形のルーバーは建物に陰影を与え豊かな表情をつくるとともに、地面から幾重にも積層する姿はこの茶屋町で創業以来100年以上にわたってお客様とともに積み重ねてきた信頼の歴史を表現しました。

CO2排出ゼロの実現へ

本社ビルのオフィス部分では、年間のエネルギー消費にともなうCO2排出量を55%以上削減することを目標にしています。

ガスヒートポンプエアコン(GHP)、ガスコージェネレーションシステムをはじめ、太陽熱集熱器、太陽光発電設備などの機器を組み合わせ、総合効率の高い省エネルギーシステムを構成することでCO2の大幅な削減を予定しています。

本社ビルのCO2排出量は、現段階における55%以上の削減目標を足がかりに、今後の技術革新、再生可能エネルギーへの進展、および将来的な屋上全面と南側壁面への太陽光パネル増設などにより、「ゼロ・CO2エミッション・ビル(ZEB)」の実現を目指します。

CO2排出量ゼロ実現に向けたロードマップ

CO2排出量ゼロ実現に向けたロードマップのイメージ図

建築物の環境性能を評価する「CASBEE大阪みらい」でSランクを取得

「CASBEE」(キャスビー)のロゴ

省資源・長寿命がテーマの本社ビルは、省エネルギーシステムのほかにも、ビル南面に設置した壁面緑化や、室内のLED照明、外壁面への直達日射を遮る庇など、さまざまな省エネ技術を導入しています。これにより、建築物の環境性能を評価するシステム「CASBEE」(キャスビー)の大阪市版「CASBEE大阪みらい」で最高評価となるSランクを取得しました。

  • 「CASBEE」とは、「Comprehensive Assessment System for Built Environment Efficiency」 の頭文字を取った建築物の環境性能を総合的に評価するシステムです。省エネルギー、省資源、リサイクル性能などの環境配慮だけでなく、室内環境の快適性、建築物の長寿命化、景観への配慮なども評価の対象になっており、総合評価はSランクからCランクまでの5段階になっています。

本社ビル5つの環境配慮

本社ビル5つの環境配慮の説明図

1.ガスコージェネレーションシステム、GHPによる高効率熱源・空調システム

ガスヒートポンプエアコン
ガスヒートポンプエアコン
ガスコージェネレーションシステム
ガスコージェネレーションシステム

オフィス階の空調や温水の熱源は、発電時の排熱を有効利用できる自社製のコージェネレーションシステムを組み合わせた構成としています。ガスエンジンに加えバイオ発電機の排熱を利用して冷温水の生成や外気の除湿を行い、併せて排熱利用温度差発電や食堂給湯にも多段利用してエネルギー総合効率を高め、CO2の大幅な削減に寄与しています。

さらに、ガスを熱源とし、エネルギー消費効率に優れた自社製のガスヒートポンプエアコン(GHP)を冷暖房に採用し、電気式エアコン(EHP)に比べ、建物の電力消費量を大幅に削減しています。本社ビルでは、合計容量3,046kWのGHPを設置しています。

2.太陽光発電による創エネルギー

南側壁面に設置された太陽光発電パネル
南側壁面に設置された太陽光発電パネル

都市型ビルにおける創エネルギーシステムでは、太陽光発電設備が最適です。特に日射障害のない屋上に太陽光発電パネルを設置することで日中の電力に利用できます。本社ビルでは、屋上の南向きに太陽光発電パネル約35kWを設置し、年間約31MWhの電力を得ることができます。

3.ビル南側に大規模な壁面緑化を設置

壁面緑化
壁面緑化

本社ビルの南壁面に、幅23.7m、高さ52m、面積約1,230m²の壁面緑化を設置し、利用者のアメニティ向上や、地域の生態系の回復、大気汚染物質の吸着、都市のヒートアイランド抑制に寄与します。地上の植栽やミスト噴霧と併せて、周囲街路への涼気のにじみ出し効果を期待しています。この壁面緑化ユニットは透過性を持つため、眺望を確保しながら日射を遮蔽し、室内の快適性と省エネルギーを両立します。また、4割程度を花の咲く地被植物とすることで、ミツバチの集蜜にも配慮しています。

4.LED照明と自然光を組み合わせ省エネに貢献

LED照明
LED照明

オフィス照明は、一般的にビル全体で使用するエネルギーの約4分の1を占めるとされています。そのため、本社ビルでは、一部の設備室や特殊照明を除き、LED照明を採用し、CO2削減に貢献しています。また、ビルの窓面積を広く取り、天井を高くすることで自然光を多く取り入れる構造になっており、センサーにより照明の明るさを自動的に制御しています。

5.自然を生かし熱負荷を遮る快適な窓まわりシステム

窓まわりシステム

オフィスの窓まわりは、自然光の活用と直達日射の室内侵入防止を両立させるエコルーバーを採用しています。日射を取り入れる上段と、居住域の高さである下段に分けることで、採光と日射遮蔽を別々に制御することができます。また、窓下換気口からは自然換気の取り入れを行い、コミュニケーション階段(エコシリンダー)を風の通り道として、合理的に窓まわりの光と風を利用します。

NPO法人 梅田ミツバチプロジェクト

ヤンマーでは、2011年から始まった大阪・梅田での養蜂活動「NPO法人 梅田ミツバチプロジェクト」を支援しています。プロジェクトは2013年からNPO法人として活動しており、本社ビルの屋上庭園内に、ハチの巣箱を設置する場所を提供するとともに、今後もさまざまな活動協力を行っていきます。

BCP発動時の防災拠点

本社ビルは、BCPを発動した際の防災拠点としての役割を果たす必要があります。大阪市のハザードマップでは、大雨による淀川氾濫の際は地上4m近くまで浸水する可能性が指摘されています。本社ビルでは浸水の危険性を考慮し、重要な設備は2階以上に設置しています。

また、大規模な地震に備えビルの5階に免震層を設けた中間免震層を採用しています。これにより、震度7の地震に対しても建物の柱・梁など主要な構造部は損傷せず被害を最小限に抑えます。

免震層の位置と浸水リスク

免震層の位置と浸水リスクのイメージ図

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