会社概要
ヤンマーキャステクノ株式会社 甲賀事業部
所在地:滋賀県湖南市柑子袋360番地
更新日時:2025.10

2050年カーボンニュートラルの実現に向け、企業には脱炭素事業への具体的な取り組みが求められています。
一方で現場では、「カーボンニュートラルをどのように進めてよいのか分からない」という課題に直面しているケースもあります。
ヤンマーグループでは、カーボンニュートラルを実現するためのロードマップ「YANMAR GREEN CHALLENGE 2050」を策定しました。
本記事では、「カーボンニュートラルロードマップの作り方」について、ヤンマーグループの知見をもとにわかりやすくご紹介します。
ロードマップ策定に取り組む際にぜひお役立てください。
<目次>
カーボンニュートラルは「人間の活動により排出される二酸化炭素(CO2)と、吸収される二酸化炭素(CO2)が同じ量となり、実質ゼロになること」を指します。
2020年10月、日本政府は2050年までにカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを宣言しました。さらに2025年2月には「第7次エネルギー基本計画」を発表。これは2050年カーボンニュートラル実現に向けた中間指標であり、2040年までに温室効果ガス73%削減(2013年比)を目標としています。
このようにカーボンニュートラルの実現には、中長期的な視点に立った計画の策定が不可欠です。
カーボンニュートラルロードマップは、企業が温室効果ガス排出量を実質ゼロに取り組むための戦略プランを示したものであり、単なるスローガンではなく、中長期的な経営戦略の柱となります。
日本を含めた世界各国で脱炭素社会への取り組みが加速する中、カーボンニュートラルロードマップの策定は、先進企業だけでなく、あらゆる業種に求められる課題です。
カーボンニュートラルロードマップの策定は、企業にとって不可欠となっています。いくつかの理由を紹介します。
第一に、社会的要請に対応し、信頼を確保するため。
投資家をはじめ、取引先や消費者など、さまざまステークホルダーは「2050年に向けてどのような道筋を描き、実行しているのか」を注視しています。
また、具体的なロードマップを示すことで、ブランドイメージの向上や資金調達力、人材確保につながります。
第二に、コストとリスクの低減。
エネルギー価格の高騰をはじめ、炭素税の導入や排出規制、環境配慮を求められるサプライチェーンの拡大など、将来の経営リスクが高まっています。省エネ・再生エネの活用は、長期的にはエネルギーコストを削減すると共に、取引機会喪失のリスクを下げることができます。
第三に、新事業や成長のチャンス。
省エネ投資や再エネの導入、脱炭素技術・脱炭素サービスを開発することにより、新たなビジネスチャンスを創出できます。ロードマップの策定は、新規事業やイノベーションの方向性を示す羅針盤となります。
以上のことから、カーボンニュートラルへの取り組みは単なるCSR(Corporate Social Responsibility)活動にとどまらず、企業の成長と持続性を確保する「経営戦略マップ」と捉え直す必要があります。
カーボンニュートラルのロードマップ策定に盛り込むべき要素は下記の通りです。
組織体制:カーボンニュートラル取り組み推進のための組織を編成します。
CO2排出量の把握:Scope1、Scope2、Scope3に沿って、自社や組織の現状を把握する必要があります。
| 区分 | 排出例 | |
|---|---|---|
| Scope1 | 直接排出 | 自家発電や車両による燃料使用、工業プロセスなどよる直接的なCO2排出 |
| Scope2 | 購入エネルギー由来の間接排出 | 購入した電力・熱などの使用に伴う間接排出 |
| Scope3 | Scope2以外の間接排出(サプライチェーンを含む、自社の活動に関連する間接排出) | サプライチェーン(原材料調達・物流)、製品使用・廃棄など、自社の活動に関連する間接的排出全般 |
目標の設定:企業が目指す目標を具体的な数値で設定します。目標設定は、短期→中期→長期の視点で策定すると良いでしょう。例えば、2050年カーボンニュートラル達成を最終目標とし、その過程で2030年に○○%削減、2040年○○%削減などの中間目標を設定します。
削減施策・実行計画:自社の特徴(強み・弱み)を分析し、具体的な取り組みを示します。
| 項目 | 具体例 |
|---|---|
| 省エネ設備の投資 | 省エネ設備の導入やエネルギー運用を改善/td> |
| 再エネの導入 | 太陽光発電やバイオ燃料発電の導入による自家消費 |
| 燃料転換 | 水素やバイオマス燃料など、クリーン燃料への転換 |
| 資源の循環化 | 廃棄物のリサイクルや副産物の有効利用 |
| サプライチェーン連携 | 原材料調達先や物流事業者も含め、サプライチェーン全体での排出削減 |
定期的なモニタリングと報告:短期・中期・長期で設定した目標を基に、進捗を定期的にチェックします。必要に応じて施策の見直しや改善を行います。また進捗状況は、社内外に向けて情報公開し、透明性を確保します。
ヤンマーでは、独自のカーボンニュートラルロードマップ「YANMAR GREEN CHALLENGE 2050」を策定しました。「カーボンニュートラルロードマップをどのように進めてきたのか?「そのポイントは何か?」など、ロードマップの策定および推進の旗振り役を担ったヤンマーグリーンチャレンジ部 宮本宗徳さんに話を伺いました。
<プロフィール>
ヤンマーホールディングス株式会社 サステナビリティ推進部 ヤンマーグリーンチャレンジ部 部長/博士(学術)
宮本 宗徳(みやもと むねのり)
1997年、ヤンマー入社。大学および大学院では機械工学(ロボット)を専攻。「農業ロボットを作りたい」という思いからヤンマーに入社。2014年、現在のスマート農業の先駆けとなる業界初のコンバイン情報支援機能(収穫量センサ・ロスセンサ)搭載コンバインを開発。 2017年、中央研究所に配属されスマート農業に関する研究開発を指揮。2019年からはイタリアにあるヤンマー・ヨーロッパ研究所に副社長として赴任し、農業関連の研究プロジェクトの立ち上げを担当。ヨーロッパでは、脱炭素や環境負荷の低減といったサステナブル農業の先進的な取り組みが進んでおり、現地で数多くの知見を得る。
現在は「YANMAR GREEN CHALLENGE 2050」の責任者として、環境対応や新規ビジネスの立ち上げなど、持続可能な社会の実現に向けたさまざまなプロジェクトを推進している。
--------ヤンマーが「YANMAR GREEN CHALLENGE 2050」を策定した経緯を教えてください--------
宮本: 今回、私たちは「YANMAR GREEN CHALLENGE 2050」を打ち出しましたが、決して「突然はじめた」という取り組みではありません。ヤンマーは、創業当初から地球環境を意識して事業を進めてきた歴史があります。
1997年12月に採択された「京都議定書」は、先進国に温室効果ガス削減の数値目標を課した、世界初の国際的取り決めです。ヤンマーでは、京都議定書の最終年度である2012年を目標年として、2005年に「2012年環境ビジョン」を策定しました。2012年はヤンマーグループ創立100周年を迎える年であり、グループ全体での環境への取り組みを明確化する節目でした。その後も、環境問題の重要な転換期に応じて、ビジョンを見直し、進化させてきました。
さらに、2015年のパリ協定に合わせて「グループ環境ビジョン2030」を策定。2016年には、自社のブランドステートメントである「A SUSTAINABLE FUTURE」を制定しました。
そして2020年、日本政府が「カーボンニュートラル宣言」を出したのを機に、「A SUSTAINABLE FUTURE」の実現に向けた取り組みを一層強化し、加速させるために「グループ環境ビジョン2030」をアップデートした「YANMAR GREEN CHALLENGE 2050」を策定しました。これはカーボンニュートラルをはじめとした、環境負荷フリー社会の実現に向けた具体的な活動を示すものであり、持続可能な未来を見据えた重要な取り組みとなっています。
--------ヤンマーのカーボンニュートラルロードマップの特徴はありますか?--------
宮本:ブランドステートメント「A SUSTAINABLE FUTURE」のサブタイトルは、「テクノロジーで、新しい豊かさへ。」です。まさにテクノロジーこそが、ヤンマーの強みです。
創業以来、私たちはパワートレインを中心に事業を展開してきました。パワートレインは、GHG(温室効果ガス)を排出する機械の一つですが、ヤンマーは「使う側」ではなく「作る側」です。ヤンマーのテクノロジーを通して、パワートレインのグリーン化を進め、「お客様のGHG排出削減に貢献する」ことが私たちの使命だと考えています。
--------「YANMAR GREEN CHALLENGE 2050」の策定は、どのように進めてきましたか? --------
宮本:プロジェクトは、2021年から本格的にスタートしました。まず2021年度には、ホールディングスの取締役や機能部門長および事業を担うグループ会社の社長などの経営トップが参加する「地球環境委員会」で、「YANMAR GREEN CHALLENGE 2050」の取り組み内容を審議し承認を得ました。その後、経営の最重要テーマとするため「グループ戦略会議」に上申し、承認を経て、2022年度からはグループ全体での活動が本格的に始動しています。
策定と同時に重視したのが推進体制の構築です。いくら内容が優れていても、実行に移せなければ意味がありません。そこでグループ各社のトップに個別に説明を行い、納得を得たうえで、最適な形でBU(ビジネスユニット)・RU(海外ユニット)をグルーピングし、部会を編成、そのリーダーを任命するなど、現在の体制を整えていきました。ヤンマーは海外にも拠点がありますので、海外の体制づくりも欠かせませんでした。
-------体制づくりや新部署の立ち上げは、どのように進めましたか? --------
宮本: 初期の体制づくりでは、ヤンマーグループのGHG削減や環境負荷低減を、自分たちのイノベーションとテクノロジーによって“ものづくり”を変えていくことにより実現していくという観点から、技術本部が中心となって進めました。
当初のチーム体制(ヤンマーグリーンチャレンジ推進室)は、環境保全活動に携わってきたCSR部のメンバーと、技術本部からのメンバーを加えた混成チームでした。その後は、社内公募制度で「YANMAR GREEN CHALLENGE 2050」に関心のある社員も加わり、体制を拡充しました。
-------ロードマップの策定にあたり、特に注意したことはありますか?--------
宮本:ヤンマーはブランドステートメント「A SUSTAINABLE FUTURE -テクノロジーで、新しい豊かさへ。-」を掲げています。「YANMAR GREEN CHALLENGE 2050」は、「A SUSTAINABLE FUTURE」を実現するための基盤のひとつであり、グループ全体としても重要な戦略課題の一つとして設定しているものです。
ロードマップの策定では『「A SUSTAINABLE FUTURE」を実現し、持続可能な社会を築くために、ヤンマーグループがいま遂行し、達成すべきことは何か』という観点に照らし合わせながら進めました。以下の具体的な目標を定めています。
循環する資源を基にした環境負荷フリー・GHGフリーの企業になる
-------策定に取り組む際、苦労したことは? -------
宮本:ロードマップの策定は、グループとしてのはじめての取り組みです。実はグループは日本だけでなく、ヨーロッパ、トルコ、インド、中国、アジア、北アメリカ、南アメリカなど、世界にグループ会社があります。それぞれの国の事情もあって、脱炭素をめぐる、国の目標値も全部一律ではない。そういった中で、ヤンマーグループの一つのマイルストーンを設定するのは、とても難しかったです。
また、社員の方々に「自分ごととして受け止めてもらうこと」も苦労したことの一つです。正直なところ「環境問題は奉仕に見えてしまう」という側面があります。日々、目の前の売上や事業拡大などの目標のある中で、「CO2を減らしましょう!」って言われても、なかなか気持ちが動かない。そのためには、教育や意識改革も必要なことだと思います。
設備投資についても「見えない未来にどう意思決定するか」というのも難題でした。電気代が上がっていくことが予想される中、「今、再エネに投資すれば安定した電力を確保できる」と説明しても、「でも今、財布から出すのは…」と躊躇してしまう。ロードマップを策定する際は、数値による“見える化”していくことも大切な作業だと思います。
--------これから策定する企業へのアドバイスをお願いします--------
宮本:これからロードマップを策定する企業においては、まずは「自社の事業領域の中で、どういった形で社会課題を解決していくか?」を考えることが大切だと思います。具体的には、現状把握、課題の抽出、自社の強み・弱みの整理をしっかり行うことが出発点になります。
-------これからチャレンジしたいこと-------
宮本:「YANMAR GREEN CHALLENGE 2050」のチャレンジ1は「GHGフリーの企業になる」。チャレンジ2は「環境負荷フリーの企業になる」。そして、チャレンジ3では「お客様に対して、GHG排出ネガティブの新しい事業を提案していきましょう」という未来を見据えたチャレンジを策定しています。
まずは、チャレンジ1と2の実現を目指しますが、チャレンジ3への挑戦は私自身の夢でもあります。たとえば農業では、水田から出るGHGメタンを減らすこと。耕作機械を使った農法であったり、バイオ炭を埋め戻して炭素を地中に固定したり、ヤンマーのテクノロジーで、お客様の課題を解決していきたいと考えています。
-------ヤンマーのロードマップの特徴を教えてください-------
宮本:「YANMAR GREEN CHALLENGE 2050」では、「循環する資源を基にした環境負荷フリー・GHGフリー企業」を実現するために、3つの課題「Challenge1」「Challenge2」「Challenge3」への挑戦を策定しました。
「Challenge1」では、GHG排出ゼロに挑戦します。
「Challenge2」では、4つのテーマを設定し、環境負荷フリーに挑戦します。
「Challenge3」では、お客様のGHG排出ネガティブ・資源循環化に貢献します。
「Challenge1」「Challenge2」ではヤンマーグループやサプライヤーの企業活動、「Challenge3」では、ヤンマー のお客様自身のGHG削減への貢献をロードマップに盛り込みました。
小形ディーゼルエンジンをはじめ、各種エンジン部品の鋳造を行うヤンマーキャステクノ甲賀事業部では、ヤンマーグリーンチャレンジ部とヤンマーエネルギーシステムの支援を受けて、独自の「カーボンニュートラルロードマップ」を策定しました。
エンジンの製造には、金属を高温で溶かし、型に流し込んで成型する「鋳造」という加工法を用います。ヤンマーグループ内において、大量のエネルギーを使用する甲賀事業部は、CO2排出の低減が大きな課題でした。
ロードマップ策定では、ヤンマーグリーンチャレンジ部が事業部とヤンマーエネルギーシステムを結び、具体的な脱炭素支援はヤンマーエネルギーシステムが行いました。
「ロードマップ策定後の改善により、年約1,000トン※のCO2削減が見込まれています。削減量はスギの木の植林約71,400本に相当します。ヤンマーエネルギーシステムは、コージェネレーションシステムをはじめ、独自の脱炭素支援サービスやエネルギーサービスなど、省エネ・創エネに関する豊富な知見と技術を有するエネルギーの専門家です。ほかにも、非常用発電機によるレジリエンスの確保など、社会インフラを支えるという点、地域分散におけるエネルギー供給の点からも、オールラウンドに相談できる会社だと思います」と、宮本さん。
<ロードマップ策定のポイント>

ヤンマーキャステクノ株式会社 甲賀事業部
所在地:滋賀県湖南市柑子袋360番地
2050年カーボンニュートラルの実現に向け、企業はエネルギーの現状を把握し、自社の事業に合った「カーボンニュートラルロードマップ」を策定し、中長期の計画性を持った脱炭素への取り組みが求められています。
私たちヤンマーは、企業の「カーボンニュートラルロードマップ」策定を支援する「脱炭素支援サービス」をご用意しています。
ぜひお気軽にご相談ください。