世界各国のカーボンニュートラル目標と取り組み|日本の立ち位置
更新日時:2026.1

地球温暖化が世界的な問題となる中、各国は、カーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させる)の実現に向けた取り組みを進めております。
各国は「脱炭素化」を目指していますが、達成時期やアプローチは国によって大きく異なります。
本記事では、まずカーボンニュートラルの基本的な定義を確認したうえで、世界各国の目標や政策、そして日本の立ち位置について解説します。
<目次>
カーボンニュートラルとは
カーボンニュートラルとは、排出される温室効果ガス(CO2、メタン、一酸化二窒素など)を、森林吸収や再生可能エネルギーの活用、カーボンリサイクル技術などによって実質的にゼロにすることを指します。
つまり「まったく排出しない」わけではなく「排出した分を吸収・除去して差し引きをゼロにする」状態を目指す考え方です。
またカーボンニュートラルの実現は単なる環境保全にとどまらず、エネルギー構造の転換や産業競争力の強化にもつながると期待されています。
世界各国のカーボンニュートラル目標
日本では、2020年管政権下において、2050年までにカーボンニュートラルを実現すると宣言しました。
その背景には、世界共通の目標を定めた「パリ協定」をはじめとする国際的な動きがあり、各国が、それぞれの経済構造やエネルギー事情に応じた目標を掲げています。
以下で、「パリ協定」と各国の目標について解説します。
パリ協定で決められたこと
2015年に採択されたパリ協定は、地球温暖化対策における歴史的な転換点となりました。
この協定では、「世界の平均気温上昇を産業革命前と比べて2℃より十分低く抑え、1.5℃に抑える努力を追求する」目標が定められています。
また、すべての加盟国が温室効果ガス排出削減の目標(NDC:国が決定する貢献)を提出し、5年ごとに見直すことが義務づけられました。
パリ協定の特徴は、先進国だけでなく途上国も含めた全世界が参加する点です。
従来の京都議定書では、先進国に削減義務が課せられていましたが、パリ協定ではすべての国が自国の状況に応じた削減努力を行うことが求められています。
各国の目標に対するとらえ方やスタンスの違い
パリ協定のもとで掲げられたカーボンニュートラル目標は、国ごとの経済状況やエネルギー資源の違いにより多様な形をとっています。
EU諸国:再生可能エネルギーの普及やカーボンプライシング制度「域内全体での排出量取引制度(EU ETS)」を導入。産業界全体の削減を促進し、早期達成を目指しています。
中国:2030年にCO2排出のピークを迎え、2060年までにカーボンニュートラルを実現するという長期ロードマップを掲げています。
新興国:インド・ブラジルなどの新興国では、エネルギー資源に依存の脱却と、経済成長との両立が課題となっています。
次に各国の取り組みを掘り下げて見ていきましょう。
世界各国のカーボンニュートラルへの取り組み
各国が掲げる「カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量と吸収量の均衡)」目標は、掲げる時期や施策の重点が国によって大きく異なります。ここでは代表的な国々を取り上げ、目標の達成年・法制度化の状況・戦略の違いを整理します。
イギリス―気候変動法の改正で2050年ネットゼロ

イギリスの特徴として、再生可能エネルギーの普及促進、炭素価格制度(排出量取引制度)の活用、そして産業・建築・運輸部門横断での脱炭素化が挙げられます。
2019年に改正された「気候変動法(Climate Change Act 2008)」において、2050年までに温室効果ガス排出をネットゼロ(実質ゼロ)とする法的義務を設定しました。
この法制度構築により、排出量削減に関する五年ごとの「カーボンバジェット(排出枠)」が設けられ、政府はその枠内で達成可能な政策展開を行う責任を負う仕組みを設けています。
ドイツ―2045年までに温室効果ガス実質ゼロ

ドイツは、法令化された気候保護法(Klimaschutzgesetz)により、1990年比で2030年までに少なくとも65%の排出削減、2045年までに温室効果ガス実質ゼロを達成するという国内目標を明文化しています。
ドイツのアプローチは、欧州連合(EU)の気候目標とも連動しており、特に森林等の「炭素シンク(吸収源)」やCCUS(CO2回収・貯留+利用)を含めた包括的な対策が特徴です。
こうした取り組みを通じ、ドイツ経済の強みでもある製造業を軸に、国際競争力を保ちつつ脱炭素へと転換を図ろうとしています。
中国―2030年までにCO2排出ピーク、2060年までにカーボンニュートラル

中国は、世界最大の温室効果ガス排出国として、2020年9月に「2030年までにCO2排出量をピークにし、2060年までにカーボンニュートラルを実現する」という目標を発表しました。
米欧に比して達成年はやや長めですが、スケールの大きさや技術・資源の投入量において世界的な影響力を持っています。
インド―2070年までのネットゼロ

インドは、途上国としての経済発展と気候変動対策の両立を掲げ、2070年までにネットゼロを達成するという目標を発表しています。
インドの目標は、発展途上にある国々が中長期的に脱炭素の道を歩むという意味合いを持ち、世界的に注目を集めています。
しかし、現時点では法制度や細部戦略の公表には至っておらず、今後の政策具現化が課題です。
ブラジル―政府のNDCや長期戦略で2050年程度の気候中立化
ブラジルは、豊かな森林資源を有し、かつ農業・林業を基盤とする経済構造を抱えています。
政府はNDC※や長期戦略を通じて、2050年程度でのカーボンニュートラル達成を目指しています。
森林吸収力の強化と再生可能エネルギーの導入が鍵となっており、特にアマゾン地域の保全が国際的な関心となっています。
- ※NDC:国別算定貢献。各国が自主的に定める温室効果ガス削減目標を指す。
日本のカーボンニュートラルへの取り組み

我が国日本においても、カーボンニュートラル社会の実現に向けた政策・制度・技術革新を推進しています。
ここでは、以下の3点を取り上げます。
- 「2050年カーボンニュートラル」宣言と長期戦略
- 「GX(グリーントランスフォーメーション)政策」による成長戦略
- 「グリーンイノベーション基金」などによる技術革新・投資支援
「2020年のカーボンニュートラル」宣言と長期戦略
日本では、2020年10月に当時の菅首相が「2050年カーボンニュートラル」を目指すことを宣言しました。
この宣言を契機に、官民一体となり脱炭素社会の実現に向けて取り組みを進めています。
2024年に公表された「第7次エネルギー基本計画」では、2050年カーボンニュートラルの実現に向け、「安定供給」「経済効率性」「環境適合」「安全性」の4E+Sを基本理念に、エネルギーミックスの最適化と脱炭素技術の導入を柱としています。
エネルギー基本計画を実行するため、省エネ法や温対法の各法整備、Jクレジットなどの制度設立なども進められています。
「GX(グリーントランスフォーメーション)政策」による成長戦略
もう一つ注目すべき日本の取り組みが「GX(GreenTransformation:グリーントランスフォーメーション)政策」です。
GX政策では、脱炭素化を技術革新と産業競争力を両立させる新たな成長戦略と位置づけ、2030年代に向けて、戦略的に推進しています。
具体例は以下の通りです。
- 2030年における再生可能エネルギー比率目標の設定
- 脱炭素化が難しい産業(鉄鋼・セメントなど)における技術ロードマップ策定
- 10年間で150兆円規模の公私連携投資(見込み)
- ゼロエミッション車の普及
- 産業プロセスの脱炭素化
GX政策は、国際競争において「環境対応が遅れた企業、国が取り残される」リスクへのヘッジという側面があります。
グローバルな脱炭素化の潮流において、日本が主導権を握るための戦略ともいえるでしょう。
「グリーンイノベーション基金」などによる技術革新・投資支援
政策を形にしていくためには、技術革新とそれを支える資金・制度環境が必要です。
政府は「グリーンイノベーション基金(Green Innovation Fund)」を設置し、約2兆円規模をめどに研究開発から社会実装まで長期的に支援しています。
この基金では、特に水素・アンモニア、バッテリー、鉄鋼・化学分野、次世代建築、再生可能エネなど14の重点分野が対象とされており、大規模なプロジェクトや官民連携による実証試験の支援が進められています。
このように、単なる宣言ではなく「技術+資金+制度」による実装フェーズに進んでいる点が日本の特徴でしょう。
まとめ
持続可能な社会を築くために、各国はカーボンニュートラル社会の実現に向けた動きを加速しております。
民間の企業でも、カーボンニュートラル実現に向けた取り組みを求められております。
私たちヤンマーでは、カーボンニュートラルを実現するための様々なソリューションをご用意しております。ぜひお気軽にお問い合わせください。