2020.01.28

「田園風景を守るため」 伝統と先端を駆使したフクハラファーム流農業経営に迫る

滋賀県彦根市南部にある有限会社フクハラファームは、伝統農法から最新技術まで、さまざまな技術を駆使して、地域の環境に配慮した農業を続ける農業法人です。

「⾃分の⽣まれ育ったふるさとの景⾊が変わりゆく中で、何としても今ある田園風景を守り、次代へとつなげたい」という創業者の強い思いを受け継ぎ、持続可能な農業の在り方を追求する2代目社長の取り組みに迫ります。

※写真は、資源循環型農業の実現に向け、フクハラファーム内で実証実験が進む、ヤンマーエネルギーシステムの「もみ殻ガス化発電システム」。

基本の技術を大切にする丁寧な米作り

有限会社フクハラファームは、琵琶湖のほとり、滋賀県彦根市南部にある稲枝地区を中心に、約200haという広大な農地を預かり、稲作や野菜作りを行う大規模農業法人です。メインとなる稲作をはじめ、麦やキャベツといった野菜を二毛作で生産しています。事業の9割を占める稲作では11品種ものお米を栽培。有機栽培による付加価値の高いお米から、コストパフォーマンスを重視した業務用、加工用、輸出用まで、さまざまなお米を手掛けています。

「フクハラファームの創業は、1994年。『素晴らしいふるさとの田園風景を、後世に残したい』という初代社長の想いにより誕生しました。そのため創業以来一貫して “基本の技術を大切にする”ことを心がけています」と語るのは、フクハラファームの2代目社長を務める福原悠平さん。規模が大きくなっても、基本的な農法を主体とする、丁寧な米作りが実践されています。

「自然に近いところで仕事をする以上、できるだけ環境に負荷を与えないことが重要だと考えています。ただこれは、決してきれいごとを言っているわけではありません。この環境を守れなければ、20年、30年後に、必ず自分たちが困ることになる。農薬の量を減らすなど、地域で資源を循環させる取り組みが、豊かな自然を守り、最終的には自分たちの農業の発展につながると考えています」と福原さんは語ります。

基本的な技術を大切にしながら、環境にやさしい農業に取り組む、フクハラファーム2代目社長福原悠平さん。

環境にやさしい米づくりと資源の地域循環で豊かな自然を守る

環境面での取り組みとして注目されるのが、フクハラファームが一部の田んぼで行っている、アイガモ農法による有機栽培。この田んぼは、農薬・化学肥料を一切使用しないなどの厳しい基準をクリアした「有機JAS認証」を取得しており、ここで獲れたお米は、付加価値の高いお米として人気を博しています。

他にも、琵琶湖や周辺の生態系への影響を抑えるため、滋賀県が推奨する「滋賀県環境こだわり農産物」の栽培も推進。指定農場では、農薬や化学肥料の使用量を通常の半分以下に抑えるとともに、それ以外の田んぼでも、農薬を「滋賀県環境こだわり農産物」の基準量と同等に抑えるなど、環境に配慮した米作りを行っています。

また化学肥料を減らすための取り組みも進めています。近くの畜産農家で出た牛糞堆肥をもらい受け、牛糞堆肥を使った土壌づくりを推進。稲作で出た藁は畜産飼料として提供し、地域で資源を循環し、有効利用する仕組みづくりにも取り組んでいます。

こうした農業の基本技術を生かした、環境にやさしい米作りを行う一方で、最先端技術も積極的に導入しているのがフクハラファームの特徴。ヤンマーのロボットトラクター導入をはじめ、栽培データの収集やAIを使った実証実験など、大学との共同研究にも参加。より効率的な米作りの推進にも取り組んでいます。

先端技術も積極的に取り入れるフクハラファーム社長の福原さん。ヤンマーのロボットトラクターも活躍する一方、20年以上アイガモ農法による有機栽培も行っています。

農業残渣のもみ殻を、土壌改良材として有効活用

フクハラファームがさまざまな農法に取り組むなかで、ひとつの課題となっていたのが稲のもみ摺り後に出るもみ殻の処理です。かつてもみ殻の処理は、田んぼで燃やす野焼きが行われていましたが、周囲への燻煙などさまざまな事情から、現在はほとんどの地域で禁止されています。

フクハラファームでも早くから野焼きは行わず、自分たちで土に混ぜて処理したり、専門業者に回収してもらったりしていましたが、年間200トン以上排出されるもみ殻の処理は悩みの種でもありました。

「現在も、基本的には専門業者に回収してもらっていますが、もみ殻の処理は長年の課題でした。当社だけでなく、数十haから数百haを抱える大規模農業法人では、本当にもみ殻の処理に困っているのが現状です」。

こうした課題を解決するため、現在ヤンマーエネルギーシステムと共同で実証実験を進めているのが、もみ殻を有効利用して熱と電気を供給する「もみ殻ガス化発電システム」です。

国内では初となるこのシステムは、もみ殻を不完全燃焼させてガスを発生させ、そのガスを用いて発電を行うというもの。発電時に発生する熱も有効活用することができます。さらに、もみ殻を燃焼させた後にできる「くん炭」には、土壌の保水性の改善や微生物の活性化など、土壌改良などの効果があり、それ自体も農地に還元することができます。

特許技術を採用したガス化炉。約1,000℃の温度でもみ殻を燃焼させることで、有害物質を発生させることなく、熱とガスを取り出すことができます。

「現在は実証実験の段階ですが、成功すれば、乾燥・もみ摺り・選別などを行うライスセンターの動力光熱費を削減することができます。また安定した電力供給ができれば、お米を保存するための冷蔵庫を新設するといった選択肢も出てきますし、熱源はビニールハウスなどの施設園芸にも活かすこともできます。将来につながる取り組みですので、私たちも大いに期待しています」(福原さん)。

現在システムは順調に稼働しており、発電量も狙い通りの性能を発揮。副産物となるくん炭も、地元の農家から分けてほしいという問い合わせが来るなど、地域でも話題となっています。

排出されるもみ殻(左)と、もみ殻の燃焼後に後に残る「くん炭」(右)。「くん炭」は土壌改良などに活用できるほか、工業用途に使えないかという問い合わせも来ています。

近年日本の農業は高齢化が進み、農業をやめる農家も増えています。そんななか、耕作放棄地の継承など、大規模農業法人が果たす役割は、ますます大きくなっています。

「現在、30代以下の農業従事者は農業労働人口の約9%程度しかおらず、人手不足も深刻な問題になっています。こうしたなかで、若い農業従事者を増やしていくためには、われわれのような法人がしっかり収益を上げ、農業で食べていけることを示さなければなりません。資源循環型の農業は、環境面はもちろん、経営面にも貢献できる取り組みだと思っています」と福原さん。

自然を大切に守りながら、伝統農法と最新技術を融合し、より高品質で低コストの農業を目指すフクハラファーム。資源循環型農業が、日本の農業の未来に、ひとつの答えを示してくれています

 

関連情報

ヤンマーエネルギーシステム株式会社

ニュースリリース「資源循環型農業を実現するもみ殻ガス化発電システムの実証を開始」

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