建築業界とカーボンニュートラル~現状と目標達成に向けた課題~

更新日時:2025.08

建築業界とカーボンニュートラル~現状と目標達成に向けた課題~

ビルや工場などの建築物は、建設時・運用時において社会全体の温室効果ガス排出量に大きな影響を及ぼしています。そのため建設業界は、現場の機械使用や資材生産、運用段階でのエネルギー消費など、各工程で対策が求められています。
「建築業界のカーボンニュートラルがどうなっているか知りたい」「ビルや工場のカーボンニュートラル対策を進めたいけどどうしていいか分からない」と感じている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、建築業界におけるカーボンニュートラルの現状、課題、そして対応策を紹介します。
建築業界の環境問題に対する取り組みに興味関心がある方や、ビル・工場のカーボンニュートラル対策に取り組みたいとお考えの方は、ぜひご参考ください。

<目次>

建築業におけるカーボンニュートラルの現状と目標

建設業の温室効果ガス(GHG)排出量は、社会全体の中でも大きな割合を占めています。
建築業のCO2排出量は、サプライチェーン全体を考慮すると日本社会の43%にも上るとする研究もあります。(出典:産業連関表を利用した建設業の環境負荷推定

ビルや住宅は、建設時の資材製造・輸送から、現場の機械稼働、完成後の運用に至るまで、あらゆる場面でエネルギーが使われます。
これらのプロセスがCO2排出に直結するため、建築業界のカーボンニュートラルが実現した際の影響は大きいといえるでしょう。
建築物のライフサイクル全体を見渡し、脱炭素化をどう実現するかが課題です。

建設業のGHG排出量の実態

環境省の報告によると、日本国内の温室効果ガス排出量のうち、およそ30%が建築物の運用(照明・空調・給湯など)に起因しています。
さらに建設時にも、現場で稼働する建機やトラック、資材の製造過程などからCO2が排出されるため、建築業のCO2排出総量は、決して小さなものではありません。
こうした構造的な課題に向け、個々の企業努力だけではなく、業界全体の抜本的な見直しが必要です。
近年では、ESG投資(環境・社会・企業統治の観点で評価する投資手法)やサステナビリティ開示(企業の環境配慮や社会的責任の情報公開)の要請が高まり、GHG排出の削減状況が企業評価や資金調達に影響を与えるようになりました。
環境負荷の「見える化」は、取引先や投資家への信頼を構築する要素の一つになりつつあります。

図表:建築関連のスコープ別GHG排出割合(概算)

スコープ 内容 排出割合の目安(建築分野)
スコープ1 現場での燃料使用(重機・車両) 約5%
スコープ2 建物の電力・空調利用など 約20%
スコープ3 資材製造・輸送・解体等 約10〜15%
  • 参考:国土交通省「脱炭素社会に向けた建築分野の対応方針(2023年版)

法整備の変遷と政策動向

建築業界における脱炭素への制度対応は、1998年に「地球温暖化対策推進法(温対法)」が施行されて以来、段階的に環境基準の厳格化が進められてきました。

2022年の建築物省エネ法改正により、2025年度以降、すべての新築建物に省エネ基準適合が義務化されることが決まっています。
また、2025年2月に発表された「第7次エネルギー基本計画」で日本政府は2040年までに温室効果ガスを2013年度比で73%削減するという目標を掲げました。

こうした制度改正は企業だけでなく、設計事務所や行政にとっても「新しい標準」となります。
カーボンニュートラルの実現に向けて建築業界のみならず、社会全体で取り組む必要があります。

国内外の動向と建築業の責任

世界では脱炭素建築の潮流が加速しています。 アメリカやオーストラリアでは、グリーンビルディング認証制度(建物の環境性能を評価・認証する制度)の導入や、環境性能に応じた税制優遇が進んでおり、持続可能な建築が標準になりつつあります。
EUは2027年以降の新築公共建築に対して、ライフサイクル全体でのCO2排出量の開示が義務化される見通しです。
海外企業との連携において、GHG削減の取り組み姿勢が評価基準として問われるケースが増えています。
国際的な競争力を維持するため、今後ますます高まる環境基準への適応は避けて通れない課題と言えます。

運用段階のカーボンニュートラル化だけでなく製造段階にも注目

従来は建物の断熱性能や照明の省エネ性能など”運用段階”での対策に重きが置かれてきました。
しかし昨今、建設資材の”製造段階”に排出される「エンボディド・カーボン(建築時炭素)」へと重点が移りつつあります。
こうした背景を受け、多くのゼネコンではBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング、建築物の設計・施工・維持管理に活用される3次元モデルの情報管理手法)を活用し、設計段階において資材や構造のGHG排出量“見える化”に取り組み始めています。

建設業がカーボンニュートラル実現に抱える課題

  • 複雑な排出構造と算定の難しさ
  • 技術導入のハードルとコスト負担
  • 業界全体の連携不足

カーボンニュートラルへの対応が必要と分かっていても、すぐに踏み出せない建築業者が多くあります。
実務上、いくつもの高いハードルが立ちはだかっています。

複雑な排出構造と算定の難しさ

建設業は一つとして同じ現場が存在しません。
各プロジェクトに設計も施工も異なる中で、排出量を数値化し、削減する行為は決して簡単ではありません。
特にスコープ3(資材の製造や輸送、廃棄の各工程における排出)は、複数の企業と工程が絡み合うため、見える化の難度が一気に上がります。
その結果「どこから手をつければ良いのか分からない」と悩む建築業者が後を絶たないのです。

技術導入のハードルとコスト負担

建設時におけるGHG排出の削減には、再エネ電源の導入、省エネ建材の活用、さらにはBIMやAIの活用(建設DX)が挙げられます。
しかしこうした技術は、導入費用がかかり、習得に時間を要するため、多くの中小施工業者は「効果は理解しているが、現場では余裕がない」という状況に陥ります。
加えて、必要な人に制度や補助金の情報が行き届かないことも大きな課題です。

業界全体の連携不足

業界全体の連携が不足している点も大きな課題です。 GHG排出量の算定方法に一貫性がないまま、ZEBやZEHの認証基準だけが独り歩きしてしまえば、現場では混乱が生じます。
設計者と施工者、発注者とサプライヤー、それぞれの理解が一致しなければ脱炭素化は進みません。
脱炭素の推進には、業界全体が互いの考えや持ちうる情報を共有することが不可欠です。
ガイドラインの整備と、実務レベルでの教育・対話の場が求められています。

建築物の建設時・運用時のカーボンニュートラル対策

  • ZEB/ZEHの推進で「エネルギー実質ゼロ」へ
  • 木材で建物に炭素を「閉じ込める」
  • 非化石証書の活用
  • オフサイトPPAで「再エネ調達」を自社の手に
  • その他

建築物は建設時、運用時双方においてカーボンニュートラル対策が求められます。
ここでは各段階におけるカーボンニュートラル対策の方法をご紹介します。

【建築・計画での対策①】ZEB/ZEHの推進で「エネルギー実質ゼロ」へ

カーボンニュートラルとは、GHG排出量を吸収量で相殺する「エネルギー実質ゼロ」にすることです。この考え方を実現した建築が「ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」と「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」です。
高い断熱性、省エネ設備、さらに太陽光発電などを組み合わせ、建物自体のエネルギー収支を実質ゼロに近づけます。補助制度の後押しもあり、全国各地でZEB化・ZEH化の導入が加速しています。
なかでも地方自治体と連携したZEB導入モデル事業が注目されており、公共施設や地域拠点での普及が急速に進んでいます。地域資源を活かした省エネ建築は、地方創生にも寄与する取り組みとして期待が高まっています。
環境負荷ゼロを実現する建築が、次代のスタンダードになると予想されます。

【建築・計画での対策②】木材で建物に炭素を「閉じ込める」

建設・計画段階において、木材を積極利用することでCO2の排出量を削減できます。
鉄やコンクリートの製造過程で、大量のCO2を排出する一方、木材は成長過程でCO2を吸収し、伐採・加工後も建築物の中で炭素を“貯蔵”します。
「CLT(直交集成板)」などの新しい木質建材は、都市建築にも使える強度と耐火性を持つ構造材です。木を使うことで、建物そのものが「脱炭素インフラ」になるといえます。
温かみ、地域経済への貢献、環境価値──木材活用は多面的なメリットを持った選択肢として再評価が進んでいます。

【運用における対策①】非化石証書の活用

「非化石証書」は、再エネ由来の電力に付随する“環境価値”を証明する仕組みです。
非化石証書を購入し、電力使用に紐づければ、スコープ2(電力由来)の排出量を事実上ゼロとみなすことができます。
契約先を変えることなく、初期投資が小さいためどんな企業でも導入しやすい制度です。

【運用における対策②】オフサイトPPAで「再エネ調達」を自社の手に

本気で再エネを取り入れたいと考える企業は、「オフサイトPPA(電力購入契約)」が向いています。
これは、第三者が運営する発電設備(太陽光など)で作った電力を、電力会社の系統を通じて購入する契約形態です。
最大のメリットは、自社で発電設備を持たずに、再エネを長期かつ安定的に調達できる点にあります。
電力価格の変動リスクも抑えられ、環境配慮だけでなく経営の安定化にもつながります。

【その他の対策】様々なカーボンニュートラル対策

  • BIMで建物の排出量を“設計段階”から可視化
  • 設計者・サプライヤーとの協働で排出を“チームで管理”
  • EMS(エネルギーマネジメントシステム)で運用段階の効率を最適化
  • 電動建機・ハイブリッド車で現場の排出をスマートに抑制

上記のようなカーボンニュートラル対策も考えられます。
自社だけではカーボンニュートラル対策が難しいとお困りの方は、ぜひヤンマーへご相談下さい。
私たちヤンマーは、カーボンニュートラルの実現を目指す企業様へ「脱炭素診断サービス」を提供しています。
お客様のエネルギー使用量とGHG排出量を把握し、非化石証書やPPA、EMSシステム導入など脱炭素化のご提案と実行サポートを致します。

まとめ

今回は建設業におけるカーボンニュートラルの現状と課題を紹介しました。
建設のすべての段階でGHG削減が求められている一方、コストや制度対応の難しさが現場にはあります。
カーボンニュートラル対策にお困りなら、私たちエネルギーの専門パートナーにぜひご相談ください。
お客様にとって最適な方法をご提案致します。
脱炭素社会へ、一歩を踏み出す準備を始めてみませんか?

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