2026.05.28

【松田 鈴子×山下 葵生】「世界最高峰のグランドスラム」「釣りの魅力を広めるプロアングラー」それぞれの夢を追う若者たちの、没頭の日々とこれから【未来のHANASAKAビトたち #2】

Y mediaでは、何かに挑戦している人、誰かの挑戦を後押ししている人を「HANASAKAビト」と呼び、その取り組みを紹介しています。今回は、無限の可能性を秘めたU-22世代の若者4人に「未来のHANASAKAビト」としてフォーカスを当てました。

第二弾は、プロテニスプレーヤーの松田鈴子さん、高校生アングラーの山下葵生さんが登場。松田さんは5歳でテニスを、山下さんは10歳で釣りを始めて以来、それぞれの道を極めるために多くの時間を注いできました。今も成長過程にあり、今後の飛躍が期待される2人の現在地、そして、没頭の果てに目指す未来の姿について語り合ってもらいました。

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松田 鈴子(まつだ りんこ)

愛知県名古屋市出身。5歳から硬式テニスを始め、岐阜国際ジュニアテニストーナメント2021(ITF G5)シングルス優勝、JOCジュニアオリンピックカップ 第42回全日本ジュニア選抜室内テニス選手権大会 シングルス優勝など、ジュニアの大会で活躍。2022年にプロへ転向し、WTA(Women’s Tennis Association)の世界ランキングを獲得。173㎝の高身長と左利きを活かした攻撃的なプレースタイルが特徴。

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山下 葵生(やました あおい)

富山県出身。10歳の時、それまで見たこともない大きな魚を釣り上げたことで、釣りの魅力に開眼。以来、最大で年間250日を釣りに注ぎ、シーバスからクロダイ、ロックフィッシュ、キャスティングなどさまざまなルアーゲームに幅広く挑戦中。2022年、全国の釣り人が釣った魚の大きさを写真で競う、大手釣り具メーカー主催の「フォトダービー」で準優勝し注目を集める。現在は現役高校生アングラーとして、同年代の釣り仲間を増やすべく発信を続けている。

Instagram:aoi_yamashita27

幼少期に出会ったテニスと釣りに、何よりも熱中してきた

――松田さんはプロテニスプレーヤー、山下さんは高校生アングラーとして活躍されています。はじめに、お互いの活動について簡単に教えてください。

松田鈴子さん(以下、松田):私は5歳から硬式テニスを始め、小学生から全日本ジュニアなどの大会に出場するようになりました。中学で全国ベスト8、高校では全国優勝することができ、プロに転向したのは17歳の時です。それからは世界ランキングを上げるために神戸を拠点に国内や海外の大会を転戦しています。目標は、世界ランキングを上げて、世界最高峰のグランドスラムに出場することです。

2025年10月に浜松ウィメンズオープン2025の2回戦に出場した松田さん

山下葵生さん(以下、山下):話が世界規模で……すごいですね。私が釣りにハマったのは、小学4年生の時です。中学2年生からは釣りインフルエンサーとして活躍されている秋丸美穂さんに憧れて、SNSで発信を始めました。今は高校に通いながら、釣りインフルエンサーとしてフィッシングショーに出演したり、取材を受けたりしています。大会での実績としては、全国の釣り人が釣った魚の大きさを写真で競う、大手釣り具メーカー主催の「フォトダービー」という19歳以下の全国大会で準優勝しました。

釣りを楽しむ山下さん

――松田さんはどのくらいの頻度で大会に出場されているのですか?

松田:国内外合わせて、年間で25大会くらいです。国内は東京や関西、九州、海外はアジアやヨーロッパ、アメリカなど、とにかく色んな国や地域を飛び回っています。大会は決勝まで進めば1週間くらいの日程で行われ、終了後はすぐに次の大会に向けて移動と準備を進めるという感じですね。

山下:私は大会にはあまり参加していませんが、土日は必ず釣りに出かけます。平日も他に予定がなければ、学校終わりに自転車で海まで行きますね。普段は地元の富山湾と石川県の能登で釣りをすることが多いです。ただ、「フォトダービー」に参加していた時は、全国優勝を狙うために26魚種を釣る必要がありました。太平洋側でしか釣れない魚も多いので、鹿児島や宮城県の気仙沼にも遠征しました。(笑)。

松田:私も1回だけ釣りをしたことがあって。その時は全く釣れなかったんですけど、山下さんのお話を聞いてまた挑戦してみたくなりました。

山下:本当ですか?じゃあ一緒に行きましょうよ!日本の海もいいけど、松田さんとだったら海外も良いですね。海外は魚のスケールも大きいから、私の身長よりも大きい160cm以上の魚を一緒に釣りたいです。

初対面とは思えないほど会話が弾むお二人

簡単ではないからこそ面白い。何が2人を夢中にさせるのか

――松田さんはテニスを、山下さんは釣りを始めるきっかけはどんなことだったのでしょうか?

山下:私は父の影響です。10歳の時にサビキ釣りに連れていってもらって、釣ったアジに針を付け、もっと大きな魚を釣るやり方を父が教えてくれたんです。最初は釣れるわけないと思って竿を放置していたら、かかった魚に引っ張られた竿が海に落ちちゃって。父に回収してもらった竿のリールを巻いてみたら、でっかいマゴチが釣れていました。そんなに大きな魚を見たのは初めてで、自然ってすごいなあと。一気に興味が湧いて、父に教わりながらルアー釣りやエサ釣りを覚えていくなかで、気づいたらどっぷりハマっていましたね。

「型破りな性格も、アングラーとしての私の強み」と語る山下さん

松田:やっぱり、大きい魚を釣るのが一番楽しいですか?

山下:引きの強さという点では、大きい魚の方が面白いですね。ただ、釣るのが難しい小さい魚も、戦略を立てる面白さがあります。たとえば口が小さいアジなどは、針の大きさを変えるといった工夫をして、やっと食いついてくれた時は達成感がありますね。それぞれに違う楽しさがあるから色々な魚を釣りたいんです。

松田:テニスも対戦相手との駆け引きがあるけど、釣りは魚や自然が相手だから難しそう。

――そういう松田さんがテニスを始めたきっかけは?

松田:私はたまたまテレビでやっていたテニスの試合を観て、自分から両親に始めたいと言いました。最初は小さいテニススクールに週1回通って、徐々に上達していくのが楽しかったですね。そのうち試合にも出たいと思うようになり、そのためには練習量をもっと増やすため、全国的にも有名な名古屋市の強豪テニスクラブに移りました。自分より技術の高い人ばかりで、最初は練習についていくのすら精一杯。でも、放課後に毎日通い、夜まで練習しているうちに、少しずつ試合で勝てるようになりました。試合に勝つ喜びを知ってからは、もっと強くなりたいという気持ちも芽生えていきましたね。

自分のプレースタイルを大切に試合に挑んでいるという松田さん

山下:小学生の頃から「競技」として、厳しい勝負の世界で戦っていたんですね。

松田:やはり最初は全然勝てず、試合の度に悔しくて泣いていました。それでも、不思議とテニスを辞めようと思ったことはなくて。勝てるようになるにはどうすればいいかを考えるのも含めて、気づいたら楽しくなっていました。自分の強みは、長身を活かした「サーブ」。サーブを起点に試合を組み立てることを最大の武器にしています。対戦相手によって試合展開も変わりますが、常に「自分の強みで勝負すること」を大切にすることが私のプレースタイルですね。

試合に負けた時、落ち込んだ時。くじけそうになる心を支えるものは?

――スポーツはどうしても白黒がついてしまう。松田さんのように試合数が多いと、メンタルコンディションを保つのも大変そうですね。

松田:そうですね。私は特に、負けを引きずってしまうタイプなので。最近だと、優勝を目指して臨んだ2025年の全日本選手権で、本戦の1回戦で敗退してしまったんです。自分のプレーがあまり出せていない悔いの残る試合だったこともあって、当時は練習にもあまり身が入らないほどしばらく気持ちが沈んでしまいました。

山下:そんな時は、どうやって気持ちを立て直すんですか?

松田:私の場合は周囲の人の支えが大きいです。私は失敗を引きずってしまうタイプなのですが、コーチがすごくポジティブな人で。私が落ち込んでいても、「次、がんばろう」と前向きに励ましてくれるので救われています。

あとは、やっぱり家族ですね。両親はテニスプレーヤーではないのですが、メンタル面で参考になるアドバイスをしてくれることも多くて。試合でうまくいかない時でも、それを引きずらないための気持ちの持ちようなど、私の性格をよく分かってくれている家族ならではの的確な助言をしてくれます。どんな時でも変わらずに支えてくれる人の気持ちに応えたいという思いで、毎回気持ちを奮い立たせている感じですね。本当に恵まれていると思います。

2025年10月に浜松ウィメンズオープン2025の2回戦に出場した松田さん

山下:素敵ですね。私も家族はこの活動を応援してくれているのですが、高校の同級生や同世代の友人で釣りに興味を持ってくれる人が全くいなくて。釣り中心の生活を理解してもらえる人が身近にいないという寂しさを感じることはありますね。

松田:同級生を釣りに誘うことはありますか?

山下:誘っても基本的に断られるんですよ……。あ、でも一度だけクラスの友達が来てくれたことがあります。日焼けが嫌だと言うので、冬の海で一緒に釣りをしました。ただ、その子は1匹釣れたら満足したのか、あとはずっとTikTokを撮影していましたね(笑)。私の世代だと、それが普通の反応だと思うんです。だからこそ、同世代にも興味を持ってもらえるように若者目線で釣りの魅力を発信していきたいなって。まずは、クラスメートなど身近なコミュニティ内に釣り仲間を増やしていこうと燃えていますね。同世代の友達と話が合わずに寂しい思いをしても変わらず海へ出かけていくのは、魚が好きなこともありますし、 釣りのおもしろさや楽しさをもっと広く世の中に広めたいという気持ちがあるから。いつかみんなにも釣りの魅力が伝わると信じているからです。

自身のSNSアカウントを通して、釣りの魅力を発信し続ける山下さん

未来に向けてさらなる没頭の日々へ。2人が描く未来とは?

――山下さんは高校卒業という転機を来年に控え、松田さんはプロ転向5年目という節目を迎えています。お二人の直近の目標を教えてください。

山下:2026年度に大学受験を控えているので、今年は少し釣りの活動をセーブしようと思っています。大学では水産学を専攻して、将来プロアングラーを目指す上で必要不可欠な魚の生態をしっかり学びたいんです。ただ、受験勉強優先と言いつつも、高校生のうちにどうしても達成しておきたいことがあって。それは、「ランカー」と呼ばれる80cm以上のシーバスを釣ること。そのために、釣りの時間も適度に確保したいですね。今の年齢だからこその柔軟さで、セオリーにとらわれない独自のアイデアを試せるのが自分の強み。その時々の「魚の気持ち」を考えて、戦略的な釣りスタイルを磨いていきたいと思っています。

松田:今年の目標は、まず全日本選手権で優勝すること。また、世界ランキングを現在の500位台から、グランドスラム出場権が得られる250位以内に上げていきたいと思います。

山下:世界ランキング!高い目標を掲げて努力されている松田さんに、とても良い刺激をいただいています。今回こうしてお話をさせていただいたことで、自分自身のモチベーションもぐっと高まりました。

松田さんのラケットを手に取り、山下さんから笑みがこぼれる

松田:でも、現状は課題だらけで。海外の選手と戦うためにはフィジカル面をさらに強化しなければいけないし、体の使い方を含めた技術面もまだまだ強化が必要です。あとは、トーナメントを勝ち上がるための体力とメンタルですね。格上の選手に勝つことができても、それを「まぐれ」で終わらせないためには、全てにおいて強くならなければいけないので。

――2025年11月に開催されたITF WOMEN’S WORLD TENNIS TOURW50 YOKOHAMAでは、1回戦で第二シードの選手に勝利しています。

松田:その選手はキャリアハイが世界ランキング90位くらいで、私より格上でした。そんな相手でも自分のプレーが通用したことは自信になりましたね。ただ、そこで満足していては駄目。今年は大会のグレードを上げる予定です。そうするとグランドスラムに出場する格上の選手と対戦する機会も多くなると思うので、勝ち上がれるようにしっかり練習を積んでいきたいです。

――では、最後にお二人が目指す将来像。叶えたい夢を教えてください。

山下:一番の夢はやはり、若い人たちに釣り文化を広めることです。釣りってどうしても男性の趣味というイメージがあったり、業界全体の年齢層が高い傾向にある中で、私のような10代の女性でも楽しめるし、カッコいいものであることを伝えていきたいですね。そのためには世間から注目され、話題になることも重要だと思うので、釣りの技術を磨くと同時に、SNSやメディア出演などを通じてさらに発信力を高めていきたいです。

カラフルなルアーやリール。普段見慣れない釣り道具を前に、興味津々の松田さん

松田:将来の目標は、やはりグランドスラムで活躍することです。それは自分のためでもあるけど、周りの人たちのためでもあって。世界最高の舞台で勝つことで、それまで支えてくれた家族やコーチ、スポンサー、色んな方々に喜んでもらいたい。今はそれが一番の原動力になっていますね。

撮影後は動画や写真を撮ったり、二人の時間をたっぷり楽しんでいた

歩んできた道も、年齢も、取り組んでいることも違う二人。けれど、夢を追いかけ、努力を重ね、充実した日々を送っているという共通点からか、初対面とは思えないほど打ち解けて、終始和やかな空気で会話が弾んでいました。

家族や誰かに薦められたからではなく主体的にテニスを始め、強豪クラブという厳しい環境へ自ら飛び込み、周囲とのレベル差を「辞める理由」ではなく「練習に励む理由」に変えた松田さん。

釣りを趣味に留めるのではなくインフルエンサーとしてその魅力を世の中に発信しながら、更に専門知識を習得するために大学で水産学を学ぼうとしている山下さん。

一歩踏み出す勇気を原動力に、自分の可能性を信じて挑戦し続けるお二人の姿勢は、まさに「未来のHANASAKAビト」を体現しています。頼もしさに満ちた彼らの心に宿る「未来のHANASAKAビト」のエネルギーは、未来の社会を力強く牽引していくに違いありません。

取材者の肩書は取材当時のものです。(取材日:2026年2月)

 

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