December 26th, 2017|PEOPLEPRODUCT

船を選ばず、誰でも、簡単に操船できる。「ジョイスティック操船システムと定点保持システム」

「ジョイスティック操船システム」は、船体運動モデルを制御に反映させる理論により、操船技術が必要な離着岸や狭い港での旋回をサポート。
さらに「定点保持システム」は、風や潮流などの自然の力を相殺し、半径1m以内の精度で船位を保持。これらのシステムにより、遊び以外の部分でお客さまの手を煩わせず、スムーズな操船を実現しました。 今回Y MEDIAでは、このシステム開発のプロジェクトメンバーである、林さん・原さん・田村さん・苛原さんにお話を伺い、開発担当としての想いとシステムの特長についてご紹介します。

林 晃良
ヤンマー マリンプレジャー推進室システムグループ
1993年入社。これまでに自動走行制御のシステム設計や農業機械の制御、電装品の設計などを担当。今回のプロジェクトを含む操船システム開発の初期メンバーとして基本計画などを担当。

原 直裕
ヤンマー中央研究所 基盤技術研究部ロボティクスグループ
2008年入社。エレクトロニクス開発センター(当時)ではマリンプレジャー用のシステム開発に従事し、制御システム全般を担当。現在は研究部門に異動し、画像認識などロボットビジョンに関する基盤技術の確立に尽力。

田村 学司
ヤンマー中央研究所 電子制御開発部第一商品開発部 システムグループ
2011年入社。入社後はトラクター用作業機の水平制御の試験などを担当。2012年からマリンプレジャー用のシステム開発に従事し、本プロジェクトでは主に定点保持システムの設計を担当。

苛原 大資
ヤンマー中央研究所 電子制御開発部第一商品開発部 システムグループ
2014年入社。入社当初から今回のプロジェクトに関わり、主に定点保持システムの試験を担当。

オールヤンマーでマリンエンジンの拡販に挑む

↑2機2軸のスターンドライブ搭載船(エンジンとドライブ(推進機)が各2つ搭載された船)

 

これまで小形軽量高出力を武器に国内外プレジャーボート市場で販売されてきたヤンマー製マリンディーゼルエンジン。
しかし、市場のニーズはエンジン性能だけではなく、付加価値の高い操船システムを搭載した商品でした。

「買い入れ品のシステムを搭載した商品は販売していましたが、システム開発の部門があり、エンジンもドライブも作れるヤンマーの強みを生かしたシステムを作ろうとプロジェクトが立ち上がりました」

 

とプロジェクトの立ち上げ当初のメンバーだった林さん。

 

離着岸や狭水路、マリーナ内など特に狭い場所での操船にはある程度の技術が必要なため、簡単に操船できるシステムのニーズは高まる傾向にありました。そこで、2機2軸のスターンドライブ搭載船※において2つのドライブの舵角と推進力をそれぞれ独立に電子制御し、360度の移動・回転を可能にする操船システムの検討がスタート。2009年にジョイスティック操船システムJC10の開発に着手しました。

 

船の特性に左右されないシステムを目指して

ドライブの舵角と推進力を制御すれば理論上はどの方向にも移動できるはずでしたが、実機試験の際に推力方向とは異なる方向に船が移動してしまう場合があるという課題に直面しました。 いろいろな仮説を立て検証した結果、船の形と重量も舵取りに影響していることが分かりました。

「どんな船にも搭載できるシステムを目指していたので、船によって異なる形や重量をどのように制御に組み込めばいいのか頭を抱えました」

 

と語るのはJC10のシステム設計を担当した原さん。

試行錯誤の末、船体運動モデルを制御に反映させる理論を新たに確立。船の出荷時にボートビルダーやサービスマンが簡単に設定できるようにしました。

「船ごとに最適な制御ができるのがヤンマーのシステムの誇れる点です」

 

 

と原さんは胸を張ります。

試験の対象は自然の力。荒れた水上での過酷なデータ採取。

JCシリーズの次なるステップとして、入港の順番待ちや海上給油所での作業時など、船位を保つための定点保持システムの開発が2013年にスタートしました。 波や風、潮の影響で流されてしまう船を、JC10のシステムを自動制御することで所定の位置に保ちます。 予測不能な自然の力に対応するため、方位センサで計測した船の向きと、GPSで取得した位置情報から船が受けている力を算出し、それを打ち消す推進力を発生させる外力学習制御を考案しました。

 

システム設計担当の田村さんは

「巨大な重量物である船を水上で半径1m以内保持するという目標精度を実現するための作りこみには苦労しました。船が受ける力がどんなものなのか知るため、あらゆる状況下で試験を行いました」

 

と語ります。

「穏やかな状況はもちろん、悪天候時のデータも必要だったので荒波の中わざと転覆する方向に船を向けたりもしました。試験中はモニターを注視していたので船酔いに苦しむメンバーもいました」

 

と過酷な試験を苛原さんは振り返ります。

お客さまにさらなるワクワクを提供していく

こうした苦労の末、JC10を2012年に、定点保持システムを2015年にリリース。ヤンマーがお客さまに与える大きな価値の一つとしてマリンディーゼルエンジン拡販の一翼を担うこととなりました。 ただ、JCシリーズの開発はこれで終わったわけではありません。2機2軸以外の船への対応や、自動操縦を見据えたシステムなど新たな価値の創造は続きます。

「お客さまは常に新しさを求めています。私も新しいものが好きなので期待を超えるシステムを作っていきたいです」

 

 

と笑顔で語る田村さん。

今後も技術者のこだわりと想いが詰まったシステムがお客さまをワクワクさせていくことでしょう。

※2機2軸のスターンドライブ搭載船

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