【個人・企業】カーボンニュートラルへの取り組み方|国内企業の導入事例あり
更新日時:2025.10

地球温暖化対策として、世界各国が2050年カーボンニュートラル実現を目標に掲げており、日本でも政府や企業が脱炭素化に向けた取り組みを加速させています。
しかし、「カーボンニュートラルって何から始めればいいの?」「個人や企業でできる具体的な方法が分からない」と感じている方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、個人の日常生活から企業の経営戦略まで、カーボンニュートラル実現に向けた具体的な取り組み方法と成功事例を詳しく解説します。
<目次>
カーボンニュートラルに向けて個人が出来る取り組み
地球温暖化を防ぐためには、温室効果ガスの排出を実質ゼロにするカーボンニュートラルの実現が不可欠です。
これは国や企業だけでなく、私たち一人ひとりの日々の取り組みが大きな影響を与えます。
家庭からのCO2排出量削減のために、まずは日常生活の中で実践できる身近な行動から始めましょう。
節電する/省エネ家電へ買い替える
日常生活で最も身近で効果的な取り組みが節電です。
照明やテレビ・エアコン等の家電は、家庭の電力消費の約3割以上を占めます。
家庭からのCO2排出量内訳(2023年度)
| 用途 | 排出割合 | 主な対策 |
|---|---|---|
| 照明・家電製品など | 30.3% | LED化、省エネ家電導入 |
| 自家用乗用車 | 26.9% | 公共交通利用、エコカー |
| 暖房 | 15.6% | 断熱改善、設定温度見直し |
| 給湯 | 12.9% | 省エネ給湯器、節水 |
| キッチン | 5.4% | 省エネ調理器具、効率利用 |
| 一般廃棄物 | 3.9% | ごみ削減、分別徹底 |
| 冷房 | 3.0% | 省エネ設定、断熱強化 |
| 水道 | 2.0% | 節水、効率利用 |
データ出典:全国地球温暖化防止活動推進センター(JCCCA)
資料名:「4-06 家庭からの二酸化炭素排出量(2023年度)」
エアコンは1℃の調整で冷房時約13%、暖房時約10%の消費電力を削減できます。夏季28℃、冬季20℃を目安にしましょう。
また、見ていないテレビや、使用していない部屋の電気はこまめに消しましょう。
ZEH(ゼッチ)の購入・転居
ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)は、高い断熱性による「省エネ」と太陽光発電による「創エネ」でエネルギー消費量を実質ゼロにする住宅です。
断熱性能向上により冷暖房効率が大幅に改善され、夏は涼しく冬は暖かい快適な住環境ながら光熱費の削減が期待できます。
夢のマイホームを買うときや、一軒家を借りるときは検討してみてはいかがでしょうか。
その他の取り組み
その他にも、個人がカーボンニュートラルの実現に向けてでいる取り組みはたくさんあります。
ぜひ下記の記事を参考にしていただき、ご自分のできることから始めてみましょう。
企業がカーボンニュートラルに取り組むメリット
企業がカーボンニュートラルに取り組む主なメリットは以下の通りです。
- コスト削減
- 企業イメージの向上
- 競争力強化・リスク低減
- 投資・融資機会の拡大
- 新たなビジネスチャンス創出
以下で解説します。
コスト削減
カーボンニュートラルへの取り組みは、企業の運営コストを大幅に削減する効果があります。
省エネ設備の導入やエネルギー効率の向上により、電力・燃料費の継続的な削減が実現できます。
LED照明や高効率空調システムの導入は初期投資が必要ですが、運用コストの削減により数年で投資回収ができる場合があります。
特に、最新のLED照明は従来の白熱電球と比較して消費電力を約85%削減でき、寿命も25倍長いため交換コストの低減にも寄与します。
季節によって冷暖房の使用量に大きな差がある施設では、ガスヒートポンプエアコンを導入することで電力の基本料金を下げ、高いコスト削減効果を発揮します。
また、建物の断熱性能向上や窓の複層ガラス化といった省エネリフォームにより、冷暖房負荷の軽減が可能です。
これらの取り組みを総合的に実施することで、多くの企業でエネルギーコスト削減が報告されており、条件によっては従来比で20〜50%の削減を実現した事例もあります。
企業イメージの向上
環境問題への積極的な取り組みにより、企業のブランドイメージ向上が期待できます。
近年は消費者の環境意識が高まり、持続可能な企業活動を行う企業が選ばれる時代となりつつあります。
経済産業省の「ゼロエミ・チャレンジ企業」認定をはじめとする各種表彰は、企業のメディア露出機会を増加し、知名度の向上に効果的です。
このような取り組みは、消費者だけでなく、取引先や株主からの信頼獲得にも寄与し、長期的な企業価値の向上を実現します。
環境配慮企業としてのポジショニングは、競合他社との明確な差別化要因となり、市場での優位性確立に貢献します。
競争力強化・リスク低減
カーボンニュートラルへの取り組みは、将来のリスク軽減と競争力強化につながります。
なぜなら、各法規制の強化に先んじて対応していれば、追加コストや罰則を避けられるからです。
法規制が適用された後に対応すると、時間がなくて最適な設備投資を検討できない、対応が遅れるとネガティブなブランドイメージがつきかねないといったリスクがあります。
また、サプライチェーン全体での温室効果ガス削減要求が高まる中、カーボンニュートラルにしっかりと取り組む企業は、顧客に選ばれる企業になれるでしょう。
環境配慮型の商品・サービスを開発に成功すれば、新規市場で先行者利益を獲得できるチャンスがあります。
これらの取り組みは、企業の持続可能な成長基盤の構築と長期的な競争優位性の確立に不可欠な要素です。
投資・融資機会の拡大
日本のESG投資額は320兆円に達し、運用資産全体の約24%を占めており、環境配慮企業への投資意欲が高まっています。
ESG投資の拡大により、カーボンニュートラルに取り組む企業は資金調達面で大きなアドバンテージを得られます。
金融機関も融資評価基準にカーボンニュートラルへの取り組み状況を含めるケースが増加しています。
融資条件をクリアできれば、低金利融資や再生可能エネルギー導入に特化した融資メニューの活用が可能です。
新たなビジネスチャンス創出
カーボンニュートラルへの取り組みは、新たなビジネス機会の創出につながります。
Jクレジット制度を活用すれば、温室効果ガスの削減・吸収実績を収益源となる可能性があります。
グリーンテクノロジーや循環型経済に関連する新市場への開拓と早期参入によって先行者利益獲得のチャンスが産まれます。
また、カーボンニュートラル対策の取り組みを通して、他企業との技術提携や情報共有を行うことでにより、自社だけでは成立しなかった革新的なビジネスモデルの創出が期待できます。
これらの新しいビジネスチャンスは、企業の持続的な成長と収益性向上の重要な柱となり、将来の事業戦略において核となる要素として位置づけられます。
カーボンニュートラルに向けて企業が出来る取り組み
カーボンニュートラルの実現に向けて、下記のような段階的なアプローチが有効です。
- 温室効果ガス排出量の見える化
- 省エネの徹底
- 再エネの導入
- 生産効率の向上と自動化
温室効果ガス排出量の見える化
脱炭素化の第一歩は、現状把握のための温室効果ガス排出量の「見える化」です。
ヤンマーのエネルギーマネジメントシステム(EMS)では、センサーや制御機器を活用して事業活動や工程ごとのエネルギー使用状況とCO2排出量を可視化できます。
リアルタイムでエネルギー使用状況を監視し、無駄な使用箇所を把握することが可能です。
ヤンマーは豊富な省エネ実績に基づく診断と改善提案を通じて、データに基づいた脱炭素化の推進を支援します。
省エネの徹底
省エネルギーは、企業がカーボンニュートラルに向けて取り組める最も基本的な手段です。
日本の温室効果ガス排出量のうち、エネルギー起源CO2が86%を占めているため、エネルギーの使用量削減は大きな社会課題です。
参考:2023年度の温室効果ガス排出量及び吸収量
LED照明への切り替え、高効率機器の導入、適切な温度管理など、現在のエネルギー使用状況や導入設備の状況によって取り組み方は多様です。
ヤンマーの脱炭素診断では、エネルギーの専門家がお客様の状況に合わせて最適な省エネ対策をご提案します。ぜひお気軽にお問い合わせください。
再エネの導入
再生可能エネルギーの導入は、企業がカーボンニュートラルに向けて取り組める重要な手段です。
化石燃料による発電では、1kWhあたり約400〜1000gのCO2が排出されるのに対し、再生可能エネルギーはライフサイクル全体を通しても10〜50g程度に抑えられます。
太陽光発電は設置面積1㎡あたり年間約100〜150kWhの発電が可能です。
風力発電は1基あたり2〜3MWの大容量発電、地熱発電は24時間安定したベースロード電源としてそれぞれ活用できます。
食料廃棄物や排水等をメタン発酵させて発電に活用するバイオガス発電システムは、廃棄物処理コストの削減と環境負荷低減の両立を実現する創エネ手法です。
設備導入が困難な場合は、グリーン電力証書(1kWhあたり1〜3円の追加負担)や再エネ電力プラン、初期投資不要のPPAモデルなど電力購入による導入も可能です。
年間電力使用量や屋根面積、業種特性を総合的に考慮し、省エネ対策との併用により投資効率を最大化することが重要です。
生産効率の向上と自動化
生産工程の自動化と効率化は、脱炭素化と生産性向上を同時に実現する重要な取り組みです。
例えば製造業では機械設備の高度自動化により、ダウンタイムを最小化し、時間あたりの生産効率を高めることで工場からの温室効果ガス削減が図られています。
食品流通業では、AI活用により生産量を最適化し、資源やエネルギーのムダを削減する試みがなされています。
日本企業のカーボンニュートラル導入事例
カーボンニュートラル実現に向けて、既に多くの企業が取り組みを始めています。
温室効果ガスの削減は、災害対応力の強化から食品廃棄物の有効活用まで多様なアプローチで実現可能です。
今回は私たちヤンマーのシステムを導入いただいたお客様の事例をご紹介します。
千葉県市原市役所様<常用・コージェネレーションシステム>
コージェネレーションシステムは、ガスを燃料として電気と熱を同時に生成する高効率なエネルギーシステムです。
「千葉県市原市役所」様の事例では、防災庁舎の電源多重化戦略として停電対応型マイクロコージェネレーション25kW×4台を導入し、災害時の業務継続性確保と平常時の省エネ効果を実現しました。
株式会社ライフコーポレーション天保山プロセスセンター様<バイオガスコージェネ>
バイオガスコージェネレーションは、食品廃棄物を有効活用してカーボンニュートラルなエネルギーを創出する革新的なシステムです。
「株式会社ライフコーポレーション天保山プロセスセンター」様の事例では、年間約4,380トンの食品残さからバイオガスを生成し、25kWのバイオガスコージェネレーション4台で発電を行っています。
食品廃棄物の処分費用を大幅にカットするとともに、FIT制度による売電収入が加わり、経済面で大きなメリットを得られました。
株式会社マルタイ福岡工場様<エネルギーマネジメントシステム>
エネルギーマネジメントシステム(EMS)は、既存の省エネ設備を統合制御し、エネルギー効率を最大化し、お客様の省エネやGHG削減をサポートします。
「株式会社マルタイ福岡工場」様の事例では、ガスコージェネレーションやGHPなどの省エネ設備をEMSで連携制御することで、年間約100万円の光熱費削減と電力デマンドの平準化を実現しています。
EMSは管理者の運用負担を大幅に軽減しながら確実な省エネ効果とコスト削減を実現する、投資対効果の高いサービスです。
ヤンマーグリーンチャレンジ
私たちヤンマーは、“循環する資源を基にした環境負荷フリー・GHGフリー企業”への変革を目指すYANMAR GREEN CHALLENGE 2050を掲げています。
自社だけでなくお客様のカーボンニュートラル実現に向けて各分野で研究・開発を続けています。
まとめ
ここまで、個人・企業がカーボンニュートラル実現に向けて取り組める具体的な手法と、導入事例を紹介しました。
もし「何から始めればよいかわからない」「効果的な脱炭素ロードマップの作成方法がわからない」といったお悩みを抱えておりましたら、ぜひ弊社の脱炭素支援サービスをご検討ください。
エネルギーの専門メーカーとして培った技術力と豊富な導入実績により、お客様の事業規模や業種に合わせた最適な脱炭素化プランをご提案いたします。