2026.04.21
安全な暮らしを守るヤンマーの非常用発電システム。「いざ」に備えるメンテナンスの力

非常用発電システムとは、その名の通り、停電などの非常事態に備える電源装置です。異常気象や自然災害、火災など、あらゆる停電のリスクを考慮し、いざという時にさまざまな重要設備へ電気を供給します。停止が許されない生活インフラや医療機器などを、どんな状況下でも稼働させるために設置されています。
人々の生活や命を守る「最後の砦」となるだけに、故障や不具合は許されません。そこで重要になるのが、日頃のメンテナンス。非常用発電システムは「防災用」「保安用」の2種類があり、防災用であれば日常的な保守点検に加え、半年ごとの機器点検をはじめとする法定点検も義務化されています。すなわち、こまめな整備と必要に応じた補修を漏れなく行うことで、いつ訪れるかもしれない非常事態への備えとなります。
そんな「いざ」に備えるメンテナンスの重要性について、非常用発電システムを手掛けるヤンマーエネルギーシステムの社員とヤンマーの非常用発電システムを導入いただいているお客様にお話を伺いました。
非常用発電システムは、いざという時に私たちの暮らしを守る「最後の砦」
非常用発電システムとひと口に言っても、目的や用途によって導入する機械の種類、スペックは異なります。それらについて、ヤンマーエネルギーシステム大阪支社の木村さんにお話を伺いました。
ヤンマーエネルギーシステム大阪支社 和歌山サポートセンター 所長・木村真之介(以下、YES・木村):「非常用発電システムは大きく『防災用』と『保安用』に分かれます。防災用は、法的に設置が義務付けられているカテゴリー。人が多く集まる商業施設で火災が発生した際などに、非常照明やスプリンクラーを動かすための電気を供給します。一方、保安用は、法的な設置義務はなく、お客様が自主的に設置しているカテゴリー。たとえば、医療用のワクチンなどは厳格な温度管理が必要で、停電によって冷蔵庫が使えなくなると全て破棄するしかなくなる。そこで、病院では停電が起きた際でも製品やサービスの品質を保つために保安用に非常用発電システムを設置しています」

防災用の代表的な事例は、学校・病院(消火栓などは防災用、医療機器などは保安用に分類)・高齢者施設・ホテル・ビル・地下街など。非常用発電システムを設置していることで、自然災害や火災等で停電が発生した場合でも、消防用設備などに電力供給が可能になり被害の拡大防止につながります。保安用の事例は多岐にわたりますが、まずはなんといってもインフラ関連です。下水処理場などのさまざまなバックアップ電源として 、ヤンマーの非常用発電システムが設置されています。また、近年ではITやAIの普及・クラウド化に伴いデータセンターのニーズが急増した結果、大容量のデータセンターが増設され、非常用発電システムの需要も高まっています。
ヤンマーエネルギーシステム カスタマーサポート部 企画部 部長・西川禎昭(以下、YES・西川):「防災用、保安用ともに、導入して終わりというわけではありません。何より重要なのが、導入後のメンテナンスです。特にインフラ関係の設備は、いざという時に電力が供給されず稼働しないと、日々の暮らしに大きな影響を及ぼしてしまいます。仮に災害で施設の中に引いている全ての電力が途絶えてしまった場合の最後の砦が非常用発電システム。いかなる事態でも正常に稼働するよう、日頃のメンテナンスは欠かせません」

3日間の停電も、非常用発電システムをフル稼働して乗り切る
では、実際のインフラ関連施設でヤンマーの非常用発電システムがどんな役割を果たしているのか。また、日々どんなメンテナンスが行われているのか。それがどれほど重要なものなのか。「現場」を訪ね、ヤンマーの非常用発電システムを導入いただいているお客様に伺いました。

和歌山市内にある3つの下水処理場のうちの一つ「中央終末処理場」。主にどんな役割を持った施設なのでしょうか。
和歌山市 企業局 中央終末処理場 技術主査・熱田様:「和歌山市内にある3つの下水処理場のうち、最も規模が大きく、多くの汚水・雨水を処理しているのが、ここ中央終末処理場です。具体的には、工場や家庭から出る汚水をきれいにして、川や海に戻しています。また、雨水を速やかに川や海に流し、家や道路の浸水を防御・軽減する役割も果たします。この汚水の処理、雨水の排水に欠かせないのが、電動ポンプやエンジン駆動排水ポンプといった処理場設備です。中継ポンプ場の電動ポンプが汚水を低い場所から高い場所へと圧送して処理場に送り込み、沈殿・反応・消毒の工程を経て、下水処理を行います」

和歌山市 企業局 和歌川終末処理場 場長・谷様:「汚水も雨水もこちらでコントロールできるものではなく、絶えず流入してきます。そんな中で仮に停電が発生して電動ポンプが止まってしまえば、下水が処理できなくなってしまう。ニュースなどで、下水管の中に雨水が溜まり、街中のマンホールから水が噴き出す様子や、床下浸水などの被害をご覧になったことがあるかと思います。こうした被害を防ぐために、停電時でも処理ができるようバックアップ電源としての非常用発電システムが大事になってきます」

和歌山市の中央終末処理場に設置されているヤンマーの非常用発電システムは1台。この1台がいざという時の生命線になり、停電が発生すると瞬時に起動します。
ヤンマーエネルギーシステム大阪支社 和歌山サポートセンター ・和田大樹(以下、YES・和田):「1台あたりの発電量は2,500kVA相当で、この処理場にある全ての機器の稼働を賄うことができます。また、3台あるエンジン駆動排水ポンプにもヤンマーのエンジンを採用いただいています」

非常用発電システムが本領を発揮するのは、やはり大雨や大規模災害によって復旧まで数日間を要するような大停電が起こった時だといいます。
谷様:「直近では、2025年9月に、末端の中継ポンプ場で大停電が起こりました。雷の影響で停電したのですが、引き込み線の絶縁不良が発生していたため修理をお願いする必要がありました。ただ、金曜の夜だったためすぐに修理手配ができず、復旧までの最低3日間は非常用発電システムを稼働させる必要があったんです。ヤンマーさんにアドバイスをいただきながら対応できたことで、特にトラブルなく乗り切ることができました」
熱田様:「非常用発電システムは、緊急時にのみ動かすものなので、いざ使うとなると少なからずトラブルや不明点も出ることがあります。たとえば、3日間の運用となると燃料切れや潤滑油の減少などにも気を配る必要が出てくる。そんな時、ヤンマーさんの存在は心強いですね。すぐ近くにある和歌山サポートセンターに和田さんが常駐されていて、困ったことがあると早急に見に来ていただけるので本当に助かっています」
YES・和田:「台風や大雨の予報がある時には、緊急時にすぐ対応できるような体制を整えています。そのため、特にご連絡がなかったとしてもトラブルがなかったか、こちらからお声がけをしています。そうした日々のコミュニケーションがお客様との信頼関係につながりますし、そこで谷様や熱田様から『大丈夫でしたよ。いつもありがとうございます』とおっしゃっていただくことが自分自身の励みになっていますね」

暮らしの「当たり前」を守るため、欠かせない日々のメンテナンス
緊急時、非常用発電システムを確実に稼働させるためには日頃のメンテナンスが重要です。中央終末処理場では、和歌山市様と管理会社、ヤンマーが連携しながら保守点検などを行っているといいます。
谷様:「ポンプ駆動用エンジンも非常用発電システムも、設置経過年数に応じた点検は欠かせません。和田さんとも相談をしながら、優先順位をつけて計画的に行っています」
YES・和田:「 ヤンマーからは、お客様の状況や機械の状態に合わせた日常の保守点検及び法定点検というメンテナンスをご提案するようにしています。ご要望と弊社からの提案をすり合わせて、ベストに近い対応をしたいと考えています」
こうした設置年数に応じた点検に加え、安全稼働の鍵を握るのが日々のメンテナンス。異常がないかチェックし、不具合があれば補修を行うなど、常に最善の状態を保つことが重要です。
熱田様:「中央終末処理場では、年単位の大規模点検とは別に、管理会社の方にサポートいただきながら月1回のメンテナンスを行っています。設備の稼働状況を数値として計測・管理したり、オイルの汚れなどがないか目視で確認したりと、可能な範囲でチェックしています」
YES・和田:「和歌山市様の場合は、そこを非常に丁寧に対応いただいている印象ですね。メンテナンスも含めて管理が行き届いていて、設備のこともよくご理解いただいています。長い期間使っていただいている中で、どうしても油漏れなどの小さな不具合が発生してしまうことがあるのですが、部品のみをご購入いただき、ご担当者様で交換や修理対応いただける場合もあります。都度、細かい不具合や補修の情報も共有いただけるので、何かお困りごとがあった時でも対応内容の検討や準備がしやすいですね。現場の方々の高い意識に、私たちも助けられています」

こうした和歌山市様とヤンマーの強固な協力体制があるからこそ、適切かつ効率的なメンテナンスが可能となります。非常用発電システム以上に稼働年数が長いポンプ駆動用エンジンが、現在まで安全に使い続けられてきたのも、両者の緊密な連携と柔軟な対応があってこそです。
谷様:「同じ設備を長く使っていると、予期せぬトラブルが発生するリスクも生じます。たとえば、故障した部品を交換しようにも、すでに廃番になってしまっているケース。特注するとなるとコストが嵩んでしまいますが、今のところはヤンマーさんから供給いただいている状況ですね。こちらの事情も踏まえたうえで対応いただけるのはありがたいです」
YES・和田:「ヤンマーは全国に拠点があり、グループ会社間のつながりもあるため、各社で共有している部品などは調達できることもあります。とはいえ、無尽蔵に在庫があり続けるわけではありません。繰り返しになりますが、だからこそ、不具合が起こる前に日々のメンテナンスで異常を検知することが重要になってくる。単に機械が動く・動かないという問題ではなく、その先には多くの人の暮らしがあるということを念頭に、これからも谷様、熱田様と密に連携しながら設備を守っていきたいと思います」
熱田様:「下水処理は日常の生活を支えるインフラで、ある意味、正常に機能して“当たり前”のものだと認識しています。非常時だからといって、機械を止めるわけにはいきません。昨年9月の停電時に問題なく非常用発電システムが稼働したのも、日々のメンテナンスがあってこそ。これからもヤンマーさんと連携を図りながら、いざという時の備えを万全にしたいと思います」

全国のインフラを止めないために、メンテナンスの重要性を伝え続ける
和歌山市様に限らず、全国の自治体のインフラ設備はその多くが導入から長い年月が経ち、老朽化が課題となっています。機械をメンテナンスしながら長く使い続けるだけでなく、最新の設備への刷新も含めたさまざまな選択肢を用意しておくこともメーカーとしての責務です。
YES・西川:「非常用発電システム、ポンプ駆動用エンジンともに、昔とは比にならないくらい進化しています。高出力かつ低燃費でランニングコストも抑えられ、さらには環境性能も向上している。とはいえ、新しい設備の導入は容易に進められることではなく、お客様それぞれにご事情があります。インフラ設備の場合は単に機械だけを新しいものに入れ替えればいいという話でもなく、場合によっては建物自体を刷新しなければならないこともあり、大きなコストがかかってしまいます。ヤンマーとしては新しい機械を一方的におすすめするのではなく、お客様のご事情に寄り添いながら柔軟に提案をしていきたいと考えています」
YES・木村:「機械である以上、永久に使い続けられるわけではありません。丁寧なメンテナンスによって機能を保ちながらも、本当に手遅れになる前に機械の寿命が近づいていることをお伝えしなくてはならないケースもあるわけです。ある日突然、機械が動かなくなってしまったら、それこそ大変なことになりますから」
その場しのぎの対策ではなく、マクロな視点でお客様のためになることを考え、ベストなソリューションを届ける。それは顧客価値創造企業への変革を進めるヤンマーが目指す姿でもあります。
YES・西川:「正解が一つとは限りません。100人のお客様がいれば、100通りのニーズがあります。ただ、どんな方法であれ、機械を正常に動かすために欠かせないのがメンテナンスです。それは最新の設備であっても同じこと。これからも全国各地のインフラを止めない最後の砦であり続けるために、エンジニアたちにもメンテナンスの知見と技術を伝えていきたい。そして、お客様と力を合わせて、“当たり前”が当たり前であり続ける社会を実現したいと考えています」
私たちの生活を安全に守るため、非常用発電システムはなくてはならない重要なものであり、社会生活に貢献している設備です。いかなるときでも正常に稼働するように、ヤンマーは、お客様とともに暮らしを支えていきます。

※取材者の肩書・役職は取材当時のものです。



