2015.06.26

YTシリーズ量産化、インサイドストーリー

世界でも類を見ないデザインと歴史に裏付けされた確かな技術力が一つになった新トラクター・YTシリーズ。単なる農機ではなく、これからのヤンマーと農との結びつきを象徴する「ビジネスモデル」でもあります。

一台のトラクターから始まる新しいスタイルのコミュニケーションは、農家の方々のパートナーとして、ヤンマーが今後どうあるべきかを模索したもの。いわばトラクターが量産化、販売スタートするこれからが本番です。

ここからは、トラクター購入後のサポート体制の開発に取り組んだヤンマーのサービス担当者のインタビューをお送りします。お話をうかがったのは、ヤンマーアグリジャパン サービス事業部の藤墳英司さん、稲村雅広さん、ソリューション推進部の川﨑貴雄さんのお三方。

スペックだけではなくコンセプトも セールスポイントコミュニケーションを重視した「プレミアム点検パック」

──まずはサポート部門として、YTシリーズ量産化に向けてどのような取り組みをされているのかうかがえますか?

藤墳英司(以下、藤墳) 私が属しているサービス事業部 技術サービスグループでは、新商品を社内へ伝播させる社員研修や商品の技術研修を行ったり、技術マニュアルや取扱説明書などの、社員の販売促進やお客様からの問い合わせに対応できるようなドキュメント類の作成などを担当しております。

稲村雅広(以下、稲村) これまで新商品が発表になると社員研修では「これとこれが新しい機能です」、「この機能のここがポイントなんです」といった機能重視の研修方法でしたが、今回はその前にテーマを明確にし、トラクターに込められたコンセプトやメッセージをしっかり伝えることからはじめました。まずは“所有していただくことでステイタスを感じていただける”、デザインと機能性。デザインだけが斬新でかっこよくなったのではなく、その背景にある想いがあって、快適性や作業性の追及がある。単にスペックだけでは伝わらないような部分を、しっかりと落とし込んで、社内全体でアピールしていくことが私たちの役目だと思っています。

藤墳 フルモデルチェンジということもあって販売店のみなさんも期待されていました。その点でコンセプトからしっかり伝えられたのは良かったと思います。

──みなさんのご担当領域はトラクターのコンセプトやスペックの先にある、アフターサービスまで含まれます。YTシリーズのサービス面での特徴を教えてください。

稲村 YTシリーズのデビューに合わせて「プレミアム点検パック」というサービスを考えました。これまで、購入していただいたお客様には一年保証をご提供していました。ご利用開始一年後を目処に、機械の点検を無料で行うというものです。これに「50時間点検」をプラスしたのが、プレミアム点検パックです。点検内容は、エンジンオイルとミッションオイル、そして、フィルターの無料交換及び各部の点検診断を行います。

藤墳 販売側の達成感はお客様に「購入いただいた」段階で最高潮に達しますが、お客様は購入してから始まる新しい商品での期待感で気持ちが昂ぶりはじめるので、気持ちの「ピーク」が販売側とお客様では異なるはずです。50時間点検はお客様が期待以上の商品であったか、不明な所がないかお聞きする良い機会でもあると思います。お客様の気持ちを考え「買って良かった!」と思っていただける活動の一つになると考えています。

──フルモデルチェンジのYTシリーズでは、初期トラブルの早期発見も重要ですね。

稲村 50時間点検には、もちろん機械のためでもありますが、お客様といろんな話をしながら、コミュニケーションを深めていきたいという狙いもあります。納品の時ではわからない、使ってみてはじめてわかることってありますよね。お客様のご質問いただく内容に応えるのはもちろんですが、いただいたご意見を今後の製品開発へフィードバックすることも考えられます。点検時にご記入いただく点検用紙には、ご意見欄を設けています。今はどういう声が出てくるか予想できず、期待と不安が半々ですが、今後はお客様との接点をできるだけ増やしていきたい。プレミアム点検パックは、そんな目的も担っています。

――トラクターが販売されてひと段落、というよりはむしろ、ここからはじまるんですね。

藤墳 コンセプトトラクターに込められていたメッセージもまさにそこだったと思います。コミュニケーションを通じて、良いインパクトを与えられればと。

農業ICTの浸透を象徴するつながるサービス「スマートアシスト」

──農家のみなさんとのコミュニケーションという点で、点検時ではなく、日々つながるようなサービスはあるのでしょうか?

川﨑貴雄(以下、川﨑) 「スマートアシスト」がまさに、日々つながるサービスです。スマートアシスト対象機にはGPSと通信端末が搭載され、お客様の機械を見守るというもので、機械になんらかのエラーが発生した場合、機械自らが発信し、担当者にメールで知らせます。

それを見た担当者がすぐにお客様の元へ連絡差し上げるというものなんです。場合によってはオーナーさんが異変に気づく前に連絡させて頂くこともあるでしょう。トラクターの各所にセンサーがついており、どこが故障したのか、場所も特定して準備ができます。先回りして交換部品を用意することもできるでしょう。以前であれば作業中に異変が見つかれば、作業を中断し、我々にお電話いただいて……と、どうしても手を止める必要がありました。スペックを上げていくことは当然必要ですが、農家の方がお困りにならないよう「手を止めずに作業いただきたい」という思いもまた、同じくらい大切にしています。現在、GPSと通信端末の両方を搭載しているのは国内ではヤンマーだけ。

これを最大で10年間無料でお付けします。

──「プレミアム点検パック」のような健康診断もありがたいですが、このスピード感は驚きですね。

川﨑 現在、農家の方が積極的にICTを活用した経営をされているという現状もあります。今まで手書きで行っていた作付け計画や生産履歴などをデータ化し、毎年の作付け計画を立てる。そういった先進的な農家も増えてきております。せっかく立てた計画も機械が故障してしまえば作業計画、出荷計画も変わり、思ったような売上にならないこともあります。

また、今回スマートアシスト対象機をご購入された方は、スマートアシスト専用のWebページをお使いいただけます。ここにはトラクターの日々の状態が、自動で記録されていきます。蓄積されたデータは、お客様にとっては簡単な作業日報をつくることもできます。今までカレンダーに書き込んでいた内容をデジタル化し、蓄積する。経営計画の策定や見直しはじめ、お役に立つことができるサービスだと信じています。ヤンマーからメンテナンス時期の提案に活用できます。

──日本の農業従事者の方の見える化はかなり進んでいるようですね。

川﨑 先進農家さんと話していると、農業ICTについての強い興味を感じます。研修会でこのような内容をお話しすると、とても積極的に反応していただけます。スマートアシストのお客様Webページでは、地図ソフトを利用してほ場図がつくれるのですが、きっと使いこなしていただけると思います。また、異業種メーカー、IT関連企業など、農業ICTの分野へ参入しようという動きも増えてきていますし、農業全体のトレンドとなりうるのではないでしょうか。YTシリーズがもつ先進的なデザインは、先進的な農業ICTにつながる。これはお客様へ強くアピールしていきたい点ですね。

歩みを止めずに、唯一無二の価値を ヤンマーのプレミアムなサービスとは

──お話をうかがっていると、プレミアムブランドプロジェクトの目玉でもある新たなトラクターは、サービス面でもプレミアムな価値を追及しているように感じました。

川﨑 先ほどお話したスマートアシストを実現するにあたり、リモートサポートセンターを開設しました。24時間365日、お客様の大切な機械を見守る施設です。たとえば機械の使用時間や使用範囲をあらかじめ設定しておくと、その時間外もしくは範囲外に稼働した場合にセンターにメールが飛んでくる仕組みになっています。同時に、ヤンマーの担当者とお客様にも連絡が入ります。盗難の抑止にも活用できるのです。24時間365日の監視体制をはじめとするサポート体制で、「ヤンマーの機械は安心だよ」と思っていただけることもプレミアムな、大切な要素だと考えています。

藤墳 やはりプレミアムサービスというのは、ほかにはないサービスを提供しなければならない。そして、どんなに新しいサービスを提供しても、やがて同じようなものが生まれてくると思います。その時は、また一歩先行くサービスを考えていかないと。常に先行くサービスでないと、プレミアムにはなりませんから。

──YTシリーズは、これからの農に対するヤンマーの姿勢を含んだビジネスモデルのわけですが、サービス担当者として、農業に対してどんな取り組み方をしていきたいと考えていますか?

川﨑 デジタル化をはじめとする農業ICTの分野は、農業に対するイメージを変える力があると感じています。トラクターの中でタブレットを片手に、作業計画を確認し作業するようなかっこいい農業へ。若い方が憧れる農業になればと考えております。 藤墳お客様の手を止めないサービスが重要であり、その一つがスマートアシストの活用ですし、またお客様との良き相談相手として、納品・試運転後のフォローも大切です。 お客様が買ってよかった!と思っていただける活動を継続的に行っていく取組が、大切だと思っています。

――YTシリーズがそのきっかけになるといいですね。

藤墳 斬新なトラクターが出来たんだ。今そういった声を聞きます。デザインだけでなくYTトラクタの想いをしっかりと伝えられるようにしていきたいですね。

プロフィール

(写真左から)

ヤンマーアグリジャパン サービス事業部 技術サービスグループ サービス事業グループ

稲村雅広 Masahiro Inamura

ヤンマーアグリジャパン ソリューション推進部 スマートアシストグループ

川﨑貴雄 Takao Kawasaki

ヤンマーアグリジャパン サービス事業部 技術サービスグループ 研修グループ

藤墳英司 Eiji Fujitsuka

関連情報

プレミアム点検パック

YTシリーズのデビューに合わせ、新サービス「プレミアム点検パック」をご用意しました。従来の一年保証に加え、「50時間点検」をプラスし、エンジンオイルとミッションオイル、そしてフィルターの無料交換及び各部の点検診断を行います。 また、保証期間経過前にチェックシートに基づく診断チェックを行います。

スマートアシスト

万全サポートがあれば、仕事に打ち込める。スマートアシストはGPSアンテナおよび通信端末を搭載した農業機械から発信される稼働状況やコンディションの情報をもとに、お客様の作業改善や経営改善を実現するサービスです。