September 29th, 2017|

舶用エンジンの部品を再生する、レーザクラッディング技術

ヤンマーの関係会社が船の部品を長持ちさせるユニークな修理ビジネスを展開していると聞き、Y MEDIAは尼崎工場を訪れました。
大形の舶用エンジンを作る同工場の中に、レーザクラッディングジャパン株式会社(以下、LCJ)があります。ここが、レーザ技術を用いて船に使われるエンジンの部品を修理している現場です。

舶用エンジンのメンテナンスや部品の再使用の際の課題…
解決したレーザクラッディング技術とは?

船のエンジン部品は長い年月使用されることにより擦り減っていき、定期的に新品と交換しなければなりません。ユーザーにとっては時間もお金もかかってしまいます。また、摩耗した部品を再使用する場合には、これまでクロムめっきなどさまざまな方法で補修が行われてきたのですが、摩耗した部分への肉盛量の限界など、いくつかの課題がありました
(肉盛とは摩耗した部分などに目的に応じた金属を溶着させ盛り上げることをいいます)。そこでLCJはこういった課題を克服したレーザクラッディング技術を利用した、エンジンをはじめとする船の部品の補修を開始しました。

レーザ光を利用した加工技術はすでに多方面で利用されており、レーザクラッディングもその加工技術の一つ。レーザ光を用い、摩耗した部分(母材)と金属粉を互いに溶かしあうことで肉盛り補修する技術です。

母材を回転させながらレーザ光で溶かし、同時に吹き付ける金属粉も溶かしていきます。両者を回転しつつ、溶かし合いながら肉盛りすることで、補修した部分がコーティングの様に剥がれたりすることなく、最小限の熱負荷で元の金属と吹き付けた金属が融合して補修できるのです。

オレンジ色の機械のロボットアーム先端に取り付けている装置からレーザ光と金属粉末を噴射します。

レーザクラッディングは、吹き付ける金属粉を変えれば、アルミ製品や青銅製品などさまざまな部品の肉盛りに対応できます。さらにクラッディングした表面は耐腐食性にも大変優れており、海水の中でも錆びにくい性質をもっています。
また、すでにメーカーによる部品の供給期限が終了している古いエンジンでも、部品を補修することでまだまだ使えるようになることも大きなメリットです。ヤンマーは中古のガス発動機の修理・再生事業からはじまった会社なので、歴史のつながりを感じます。

専門的になりますが、具体的な例を紹介します。ピストン、という言葉を聞いたことはありますか? ピストンとは燃料の燃焼エネルギーから動力を取出すためにエンジンのシリンダ内を往復運動する円筒状の部品です。シリンダとの間の気密を保つため、外周に数個のピストンリングが嵌め込まれます。このリングを嵌める凹みがピストンリング溝です。

画像左がピストン、画像右がピストンリング溝です。取材の際に見たピストンは直径300㎜程もありました。

ピストンリングは気密性などの性能を高く維持するために表面が最初からクロムめっきされていることが多いのですが、このリングの嵌まる相手のピストンリング溝に、これまでの一般的な補修法であるクロムめっきが施されていると、お互いがクロム同士になるためすぐに焼き付いてしまいます。ユーザーは溝の補修前と補修後で2種類の異なるタイプのピストンリングを使い分ける必要があります。しかし、レーザクラッディングで補修すれば、リング表面と溝表面の材質が異なるので、焼き付きが起こらなくなります。

 

これにより、ピストンリングの使い分けは必要なく1種類で済みます。エンジンのメンテナンスを担当する乗組員さんやサービスエンジニアにとっても、部品交換の際に組み付け間違いをしてしまうというリスクを軽減することができます。

左図では、溝の中でリングが焼き付いてしまいます。右図では両者材質が違うので焼き付きが起こりません。

また、クロムめっきに対して環境負荷がはるかに低いレーザクラッディングは、地球環境にやさしい技術として業界でも注目を浴びつつあります。「レーザクラッディングは、大きなものから小さなものまでいろんな部品やさまざまな素材に対応できる可能性を秘めている」とLCJ社長の上山さんは言います。
「この部品をもっと使いたいのだが元の状態に戻せるか?」
「こんな素材でできている部品だけど、修理対応してもらえるだろうか?」
このような「現場レベルでの困りごと」からお気軽にお問合せくださいと、上山さんはにこやかに話してくれました。


 

お客さまのニーズを丁寧にくみとりながら、さまざまな部品を補修して再利用を可能にするソリューションを提供するLCJ。 今回の取材を通して、持続可能な社会の実現に貢献していくというヤンマーのブランドステートメントを体現しているビジネスであることを感じました。

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