牧野 英美 氏
鹿児島県曽於市 牧野農園
畜産と野菜生産で知られる鹿児島県曽於市で、ダイコン23ha、カンショ18haを栽培する、牧野農園の牧野英美さんは、今年からJDトラクターJD-6210Rにスガノ農機(株)のコンビソイラと松山(株)のロータリーを装着して、複合作業を始められました。
そこで、コンビソイラとロータリーとの複合作業でもメリットについてうかがいました。
鹿児島県曽於市 牧野農園
牧野農園の牧野氏が、スガノ農機(株)のコンビソイラと松山(株)のロータリーを導入し、複合作業をはじめられた経緯は、以前から作業の大変さを聞いていたヤンマーアグリジャパン(株)九州カンパニーの金丸課長が、牧野氏が新しく導入された、2台目の大型トラクターJD-6210Rの能力をフル活用した、複合作業の導入を提案したのがきっかけだ。
牧野さんは、ご自身のほ場でコンビソイラの実演機を使用、その高効率作業の素晴らしさを実感され、実演機を返却する際「このまま使いたい。もうこれからは複合作業だ!」ということで、新製品を即、導入された。
さっそく複合作業を見せていただいた。
山のような緑色の塊がゆっくりと枕地を回る。止まったと思った瞬間、ロータリーが下ろされて作業がはじまる。思ったよりも早い。横に避けると、コンビソイラ+ロータリーを着けたJD6210Rが通過する。前のコンビソイラが心土を破砕しながら土を持ち上げるところが目に見える。通り過ぎた後は、踏んでも靴がめり込まないほど硬く、所どころ雑草の生えたほ場が、フカフカで細かい土に変わっていく。魔法のようだ。
作業を終えた牧野さんに、お話をうかがった。
「心土破砕とロータリー耕が、同時にできるのが良い!」牧野さんが、いちばん魅力を感じておられるのは、なんといっても複合作業の高い作業効率だ。
元々、牧野さんのところでは、ご家族とパートさんとで作業をしておられるが、機械作業は、牧野さんご自身が一人でしておられる。そのため疲れても交代もできず、とにかく大変なのだ。
今回、複合作業を導入されたダイコンのほ場準備作業もそうだ。以前はカンショの収穫後、まず粗作業としてプラソイラかサブソイラで排水対策のための心土破砕を行い、その後ロータリーで上層の土を砕土、これで1工程。その後、間を空けて、移植直前に仕上げ作業として同じ工程をもう1度、合計2工程実施。単体作業としては4回行っていたことになる。作業時間は1/2になって、次の作業の準備にも余裕ができるうえ燃料代も、手間も半分で済む。
またダイコンを連作する場合でも、肥料散布後、コンビソイラ+ロータリーの複合作業1工程で済む。「作業が一発で済むのがうれしい!」と牧野さん。
しかし、複合作業のメリットはこれだけではない。プラスαのメリットがある。
牧野さんにうかがうと「ロータリーの爪が傷みにくい」とのこと。その理由が複合作業にあるというのだ。
そのメリットとは、ズバリ、同時作業による効果でロータリーの爪が減りにくいことだ。慣行体系の場合、天候の都合や作業の段取りがあるため、心土破砕からロータリー耕まで何日か間が空くことから、土が乾燥して硬くなるのだという。だからこれまでも、ロータリーの爪は毎年交換しなければならないほど減った。
ところが複合作業の場合、土を破砕して持ち上げると同時に、後ろのロータリーで砕土耕をするため、土が柔らかく、ほとんど爪に負担がかからない。
だから、これまでロータリー爪を毎年交換していたが、2年に1度、3年に1度で済むのではないかと期待している。少なくとも、爪の寿命が伸びるのは間違いない。
ダイコンの品質にこだわる牧野さんは、土の細かさに気をつかわれている。ダイコンの生育には、膨軟でフカフカした土が適しているからだ。「土が細かければ、発芽率も根張りもよくなるから、高品質なダイコンができる」と牧野さん。もちろん増収も期待している。
そんな牧野さんはロータリーの使い方にも、ひと工夫している。「砕土した土をすぐ出さず、ロータリーカバーを下げ、爪で跳ね上げた土をロータリーカバーへぶつけるんです」と、牧野さん。これで、初期生育に適した播種床をつくることができる。
もちろんこのような複合作業は、JDのように馬力の大きい、フレームのしっかりしたトラクターにしかできない。
牧野さんは「今は人手を増やすより、機械化を進める方が効率がいい。もちろん良いオペレータがいて2台で作業できれば話は別だけどね」と言い切る。
機械化による効率アップを実感しておられるのだ。
もうひとつ、複合(同時)作業ならではのメリットがある。同時作業が、適期播種につながるということだ。
「これまで雨の後は、表面の土が水分を含んでいることから、ロータリー耕をしても土がベタベタで作業になりませんでした。でも、この複合作業ならできるんです」と牧野さん。理由はこうだ。「コンビソイラで、下層の乾いた土を持ち上げて、その土と上の濡れた土とを混ぜるから、土がベタベタにならない。だから問題なく砕土作業ができます」と微笑む。
これまでより早く作業にかかれることから、適期播種につながるのだという。これも大きなメリットだ。
まだ複合作業を導入して間もない牧野さんだが、効率アップ、コストダウン、土性改善、適期作業の実現など、すでに複合作業の多くの魅力を実感されている。
このあと播種、そして収穫となるが、これらのメリットが収量や品質、食味などにどう影響してくるか、収穫時期になるのが楽しみだ。
「これからダイコンは変わってくると思いますよ。とにかく悪くなる要素がないですから!」と笑顔で取材を締めくくった。