第三者意見

CSR報告書2022(ハイライト版)を拝読して

株式会社日本政策投資銀行 サステナブルソリューション部長 木村晋氏
株式会社日本政策投資銀行
サステナブルソリューション部長
木村 晋 氏

CSR報告書2022(ハイライト版)は、ウェブサイトにおける詳細な情報開示から、「A SUSTAINABLE FUTURE」が掲げる4つのビジョンに向けた製品・サービスや事業活動事例を抽出・再編集し、コンパクトに纏める構成になっています。

冒頭のトップメッセージでは、「自然の豊かさ」と「人間の豊かさ」を両立した「新しい豊かさ」の実現に挑戦するべく、新たに策定した「YANMAR GREEN CHALLENGE 2050」と人材育成への姿勢を示す「HANASAKA」を二本柱として取り組む方針が述べられています。

今回の報告書の目玉は、その二本柱の一つ、「YANMAR GREEN CHALLENGE 2050」でしょう。具体的には、①Scope3も含めた2050年までのカーボンニュートラルの実現、②資源循環による環境負荷フリー、③顧客のカーボンネガティブ・資源循環化への貢献、の3つの「Challenge」を掲げています。自社の企業活動の環境負荷低減に関する①②については、新たに2050年という長期軸のもとで、ロードマップを策定された点は大きな進展と考えます。また③では貴社の製品・サービスを通じた環境価値の創造を謳っており、社会課題の解決と事業の成長が同期する将来像を、具体事例をマッピングしながら示している部分も重要です。一方で、今回の「2050年Challenge」と足もとを繋ぐマイルストーンとしての「環境ビジョン2030」や、具体的なPDCAサイクルを担う「環境中期計画」の記載充実を期待したいところです。

次に、本報告書の主要コンテンツとなる、「事業活動」及び「CSR活動」の事例紹介が続きます。4つのビジョン毎に纏められており、「目指す姿」、「製品・サービス」、「SDGs」、「社会課題」といった共通の構成で、読み手にとって理解しやすいものとなっています。具体的には、脱炭素社会に向けて船舶業界で期待される舶用水素エンジンの実証試験、ロボットトラクターによる自動草刈り機、食品廃棄物を減容し資源循環に貢献するバイオコンポスターなど、「テクノロジーで、新しい豊かさへ」というブランドステートメントに沿った好事例が挙げられています。

またCSR活動報告として、「従業員の人材育成」の記載が追加されたこともポイントです。柔軟でクリエイティブな制度設計やCDP制度の導入など、「挑戦する企業」を支える人的資本の価値向上を重視する姿勢を窺い知ることができます。一方、冒頭のトップメッセージでもう一つの「柱」として言及された「HANASAKA」に関する解説の充実を期待したいと思います。

脱炭素に加え、資源循環や生物多様性などの環境課題、人的資本、人権への関心の高まりなど、サステナブルな社会の構築に向けた国内外の動きは依然速く、企業に対する期待も一層高まっています。本レポートで示された個別の取組事例に加えて、貴社事業が全体として変化してゆく姿や、それを通じて生み出す社会的インパクトの大きさを伝えて頂くと、「新しい豊かさ」に貢献する貴社の価値創造が、より説得力を増してステークホルダーに伝わるのではないでしょうか。

株式会社日本政策投資銀行 サステナブルソリューション部長 木村 晋 氏 プロフィール

1995年日本開発銀行(現(株)日本政策投資銀行)入行。企業金融第5部課長、経営企画部課長、米国コロンビア大学客席研究員、産業調査部次長などを経て、2019年6月より現職。東京大学法学部卒業、米国ロチェスター大学MBA。

第三者意見をいただいて

ヤンマーホールディングス株式会社 代表取締役 COO 山本 哲也
ヤンマーホールディングス株式会社
代表取締役 COO
山本 哲也

ヤンマーグループでは、2019年度から継続して日本政策投資銀行の木村様より、当社グループのCSR報告書についてご意見を頂戴しており、誠にありがとうございます。

当社グループは、テクノロジーの力を通じて人間と自然の豊かさを両立した“新しい豊かさ”を実現するために挑戦を続けています。110周年を迎えた今年、私たちは次の100年に向けて「社会価値を生み出す200年企業」になるという大きな目標を掲げました。その実現のため「YANMAR GREEN CHALLENGE 2050」と「HANASAKA」を2つの柱として、グループが“ONE YANMAR”として結束することでお客さまと社会の課題を解決し、新たな価値を提供していきます。

木村様からご指摘いただいた通り、本報告書では「YANMAR GREEN CHALLENGE 2050」に焦点を当てた報告を「Close up」(特集ページ)としてご紹介しています。「循環する資源を元にした環境負荷フリー・GHGフリーの企業になる」ことを目指し、①「グリーンハウスガス(GHG)排出量ゼロの企業活動を実現する」、②「循環する資源を元にした環境負荷フリーの企業活動を実現する」、③「お客様のGHG排出ネガティブ・資源循環化に貢献する」という三つの課題に挑戦します。木村様からは、①②は2050年までの長期視点によるロードマップ策定について、③は社会課題解決と具体的なソリューション事例のマッピングについて、それぞれ評価いただきました。その一方で、2050年目標達成に向けた2030年のマイルストーン策定や、中期計画の記載充実に期待をお寄せいただきました。引き続き関係部門で検討を進め、策定後速やかに公表したいと考えております。

4つのVISIONに沿った事業活動の事例紹介では、舶用水素エンジンの実証試験、ロボットトラクターによる自動草刈り機、バイオコンポスターなどが、ブランドステートメント“A SUSTAINABLE FUTURE”に沿った好事例として言及いただきました。今後は「YANMAR GREEN CHALLENGE 2050」との関連も整理しながら、脱炭素社会、資源循環社会の実現に貢献していきます。さらに、CSR活動報告では、従業員の人材育成の記載を評価いただきました。価値創造に向けて人的資本の重要性はますます高まっており、当社グループも社員がいきいきと働ける制度設計や環境づくりの取り組みを顧客価値の創造につなげていきます。

当社グループは、「YANMAR GREEN CHALLENGE 2050」で掲げた三つの挑戦を実現させるため、事業活動を通じた環境への取り組みを加速させていきます。また、「HANASAKA」の実践や、さまざまな社会課題の解決に貢献できるように、今後もステークホルダーとの対話と協働を図りながら、それを通じて生み出す社会的インパクトについても伝えることを含めて“新しい豊かさ”の実現に挑戦していきます。

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