CSR報告書 2021(ハイライト版)は、昨年度と同様に、ウェブサイトにおける詳細な情報開示から、「A SUSTAINABLE FUTURE」が掲げる4つのビジョンに向けた製品・サービスや事業活動事例を抽出・再編集し、コンパクトに纏める構成になっています。
冒頭のトップメッセージでは、足下の新型コロナウイルスへの対応に言及したうえで、SDGsなど持続可能な社会の実現に向けた課題の解決、特に「脱炭素社会の実現」に貢献する点、「顧客価値創造」を重視する点、またその基盤となるダイバーシティを推進する環境・制度整備を行う点が強調されました。そして、これらの重要課題に向き合う姿勢として、「グループ一体」「結束」といった言葉が繰り返し述べられ、「ONE YANMAR」のキーワードが掲げられた点が印象的です。
後に続く、「A SUSTAINABLE FUTUREの実現とSDGsへの貢献」は、貴社のCSR経営の全体像を示す重要なページです。ミッションステートメントの実践こそが貴社グループのCSRそのものであることが再確認され、社会課題やSDGsと紐付けながら、事業活動を通じて「4つの未来像」の実現を目指す、という基本的な考え方が簡潔に示されています。今年度版では、「ヤンマーと関連が深い社会課題」と「解決に貢献できるテーマ」が具体的に記載され、大きなグローバル課題に言及した昨年度版に比し、より貴社の観点に引き寄せて社会課題が語られている点に好感を持ちました。後段での記述にあるように、これらの諸テーマが、「4つの未来像」とリンクしている点を表現できれば、一層ストーリーが明確になると感じました。
本報告書の中心的なコンテンツとなる具体的な取り組み部分は、4つのビジョンごとに「目指す姿」「製品・サービス」「SDGs」「社会課題」を簡潔に示したのち、「事業活動」および「CSR活動」の事例が紹介されるという、昨年度と同様の統一された構成となっており、非常に読みやすいと感じました。具体的には、脱炭素社会に向けて船舶業界で期待の高まる舶用燃料電池システムの実証試験、デジタル/データを活用した「顧客価値創造」として、トップメッセージでも言及されていたヤンマーシナジースクエアの稼働など、「テクノロジーで、新しい豊かさへ。」というブランドステートメントに沿った好事例が挙げられています。またCSR活動報告として、「Diversity For YANMAR」に基づく、ダイバーシティ&インクルージョン関連の記載が拡充された点もポイントです。
日本政府による2050年のカーボンニュートラル宣言以降、サステナブルな社会の構築に向けた国内外の動きが加速しています。貴社においても、「環境ビジョン2030」および「第五次グループ環境中期計画」の見直しが行われているとのことです。貴社の特色あるミッションを起点とした、社会課題の解決に大いに期待するとともに、「4つの未来像」に向けたロードマップやマイルストーンの設定と開示など、ステークホルダーコミュニケーションの一層の高度化を期待したいと思います。