VISION01 省エネルギーな暮らしを実現する社会

2018年度のCSR・環境活動特集

多様なエネルギー資源の利用と低炭素な社会実現に向け水素燃料電池システムの開発と普及を通じて産業分野における水素エネルギー活用と発展に寄与

ヤンマーを取り巻く社会課題とヤンマーの提供できる価値
関連する主なSDGs目標:7

日本では、国内で供給する一次エネルギーのほとんどを中東地域などの化石燃料に依存しています。石炭、石油に加え、東日本大震災以降は火力発電所などに使われるLNG(液化天然ガス)の消費が増えたことにより、化石燃料依存度は一次エネルギー全体の89%を占めています。さらに、一次エネルギーのうち日本国内のエネルギー自給率はわずか8.3%です。

また、深刻化する地球温暖化問題の根本的な解決に向け、持続可能な開発目標(SDGs)やパリ協定など国際的な枠組みのもと、世界各国が温室効果ガスの排出削減目標を定め、取り組みを加速させています。日本も2030年度目標として、2013年度比で26%削減を掲げています。

エネルギー安全保障の確保と温室効果ガス排出削減の課題を同時並行で解決していくため、新たなエネルギー源の一つとして期待されているのが水素です。水素は再生可能エネルギーなどのさまざまなエネルギー源からつくることが可能であり、利用段階でCO2を排出しないという環境特性を有しています。また、エネルギーを貯め、運び、利用するエネルギーキャリアとしての特性を持っています。

ヤンマーは、水素エネルギーの活用に向けた研究開発を推進しており、まずは小型船舶への燃料電池の展開に貢献するため、国や他の事業者と共に安全ガイドライン策定を目的とした実証試験を行っています。

船舶への燃料電池の展開
  • ※1 経済産業省資源エネルギー庁「日本のエネルギー2017年度版」(2017年)
  • ※2 環境省「2016年度(平成28年度)温室効果ガス排出量(確報値)」(2018年)

60kW級の水素燃料電池システムを搭載した小型船舶の実船試験で安全性を確認

モビリティのなかでも船舶は低炭素化が難しい分野とされており、燃料電池の活用を含めた電動化等の推進が、CO2排出削減に有効だと考えられています。

ヤンマーは、国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所 海上技術安全研究所(海技研)、および一般財団法人 日本船舶技術研究協会とコンソーシアムを組み、国土交通省より受注した「水素燃料電池船の安全ガイドライン策定のための調査検討事業」の一環として、実船試験を2018年2~3月にかけて実施しました。

本事業は、2015年度から3年計画で取り組んできたもので、最終年度となる2017年度は、燃料電池の塩害対策や動揺試験などのこれまでの基礎試験で得られた成果に基づき、実船試験を行いました。

実船試験は、当社と海技研が主体となり、当社製60kW級舶用燃料電池システムおよび渦潮電機(株)製のリチウムイオン電池システムを実験船に搭載して実施しました。その結果、燃料電池システムや、燃料電池船に搭載する蓄電池システムに求められる安全要件の妥当性を確認することができ、試験結果は「水素燃料電池船の安全ガイドライン」の検討に貢献するため、国土交通省に提出しました。

当社は、将来の水素燃料電池船の実用化に向け、引き続き舶用燃料電池システムの高出力化やコンパクト化を目指した研究と実証試験を実施していきます。 水素燃料電池船の潜在的な市場の一つとして、都市部の観光船や遊覧船などの沿岸航行小型船舶が想定されており、まずは、こうした市場への導入可能性を検討し、費用対効果の大きいものから実用化を目指していきます。

60kW級舶用燃料電池システム
実船試験の様子
ヤンマーの社員が各種情報を監視

社員の声
船舶分野の低炭素化のために燃料電池という新たな技術で取り組んでいきます

スタッフ写真

ヤンマー(株)
中央研究所
パワートレイン研究部
新パワーソースグループ
丸山 剛広(上段左)

ヤンマー(株)
エンジン事業本部
特機エンジン統括部
開発部
システム開発部
行實 文明(上段右)
灰庭 照繕(下段右)
平岩 琢也(下段左)

船舶分野も含めて、ヤンマーの事業領域の環境規制は今後ますます厳しくなっていきますが、この環境変化を脅威ととらえるのではなく、"A SUSTAINABLE FUTURE"を実現する絶好のチャンスととらえています。船舶分野における水素利活用には、法整備やインフラ整備、燃料電池の耐久性や信頼性等の技術面、コスト面の課題がありますが、燃料電池という新たな技術でヤンマーが業界を牽引すべく、メンバー全員が一丸となって奮闘しています。今後も燃料電池船の実用化に向けて、継続的に技術開発・実証を行うとともに、国家プロジェクトなどの枠組みを活用してルールづくり、仲間作り、インフラづくりなどの取り組みに貢献していきます。

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